似た者同士

勝利だギューちゃん

第1話 絵


その人の内側にある姿が、最も目に見えてくるもの・・・

写真ではわからない物が。絵だと取るように分かる・・・


「上手い絵=魅力のある絵」ではない・・・

ではないが・・・


絵は、描けば技術は上達する。

しかし、それと同時にもっと大切な、何かを失ってしまう・・・


その何かは、その人が持っていた味・・・


気が付いた時は、既に手遅れだが。

その味を取り戻そうと四苦八苦する。


それは、絵を上達させるよりも、難しい・・・

いつしか限界を感じて、筆を置く。


そして筆置けば、絵、そのものが描けなくなってしまう・・・

そして、筆を折る・・・


そしたら勘が鈍り、ジ・エンド。


「いつから、俺は堕落したんだ・・・」


町をさまよい歩いていた・・・

世間の目は、俺に注目する・・・


「いい意味」ではなく、「悪い意味」でだ・・・


世間というものは、冷たい・・・

特の俺のような、脱落者には、叩きのめしてくる。

若い頃からそうだった。

うとまれていた・・・


でも、若い頃は気にしていなかった。

むしろ、俺の方が「お前らとは違うんだ」と、

心の中で、繰り返していた・・・

「今に見てろ・・・」とも・・・


しかし、現実というのは、やはり厳しい・・・


いつしか俺は、自分の描きたい絵よりも、世間受けする絵を描くようになった。

そうなれば、最初の頃は、それなりに売れていた。


しかし所詮は、人真似でしかなく、だんだんと自分本来の絵が、描けなくなった。

世間受けする絵は描きたくない、でも、自分の描きたい絵でないと意味がない・・・


だんだんと、袋小路に入り、いつしか、変わり者扱いをされていく・・・


最初は気にしていたが、いつの日か、慣れてしまった・・・

「これが、俺のあるべき姿だった」

そう思うと、少し気が楽になった・・・


今は日雇いのバイトをしながら、どうにか食いつないでいる。

この歳でバイト生活なんて、恥ずかしいのだが、俺はもういい。

妻子のいないのが、せめてもの救いか・・・


バイトの帰り、公園のベンチに腰かけていた。

夕暮れ時なのか、人は少ない・・・

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