第12話

 僕は話した。

 僕の前世の話を。

 すると十三さんがうなずいた。


「んー、じゃ軽く調べてみようか?」


「調べるってなにを?」


 僕がそう尋ねると十三さんが笑った。

 悪いことを考えていそうな顔だ。


「水樹 七緒さんの個人データをね」


「え?」


 僕は耳を疑った。

 そんなの教師が出来るわけない。

 それとも今の時代は出来るのかな?


「じゃ、アンバランサー。

 水樹七緒さんの情報をちょちょくらささーいと集めてくださいな」


 一さんがそういうと一さんの眼鏡がピコンと光った。

 そして、音声が流れる。


「水樹七緒さんの情報を検索します」


「って、あれ?

 そんなの同姓同名の人何人いると思っているの?

 結構いるんじゃないの?」


 僕がそういうと十三さんが得意げに笑う。


「先ほど見せてもらったメールアドレスと水樹さんの生年月日やシンガポールへと渡航履歴を調べれば、かなり特定出来ると思うよ」


 なんだろう。

 ストーカーもびっくりなことを言っている気がする。


「……検索完了しました」


 アンバランサーがそういった。


「早い!」


 僕は驚いた。


「現在、ひらかた市民病院に入院しています」


 アンバランサーの言葉に僕は再び驚いた。


「入院?なんで?」


「ご要望とあれば、病院システムにハッキングして調べますがよろしいですか?」


「ダメです」


 僕は即答した。

 それは個人情報だ。

 調べるのはダメだ。

 そう思った。


「ひらかた市民病院か近いな」


 一さんがそういってうなずいた。


「そうだね」


 正三さんもうなずく。


「明日、面会に行ってみるか?」


 一さんがそう言ってくれた。


「でも、いいのかな?」


「ダメなのかい?」


「だって前世では知り合いだけど。

 この姿では……」


「そんなの関係ないと思うよ。

 友だちはずっと友だちだろう?」


 正三さんの言葉が優しく暖かかった。


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