第5話 魂喰
「……えっと、能力に関する説明は終わりですけど……他に何か、知りたいことはありますか?」
胸の前でもじもじと組み合わせた手を動かしながら、リヴが控え目に問うてくる。
分からないことはまだ色々とあるが、今この場で質問する必要はない。彼女たちに質問しなくても必ず知識は手に入るということを、あたしはちゃんと理解しているからだ。
だから、彼女たちとの会話はこれでおしまい。あたしは行動を開始することにした。
「……知りたいことはないけど、ひとつお願いがあるわ」
「何でしょうか?」
怪訝そうな顔をするメルティーアに、あたしは言った。
「武器になるものが何もないのは流石に不安だから、武器になる道具が欲しいんだけど」
あたしは今、返り血で少しばかり汚れた制服を着ているだけの格好だ。さっき持ってた大鉈は投げ捨ててきちゃったから、代わりになるものが欲しかった。
ああそうですねと彼女は納得したように頷いた。
「そうですね、すっかり失念していました……では、貴女に武器を差し上げましょう。この世界で流通している形式の武器であれば何でも用意できますが、何が宜しいですか?」
この世界で流通している武器の種類なんてさっぱり分からないし、あたしが希望している形状の道具が存在しているかどうかも不明だったが、とりあえず希望を言うだけ言ってみることにした。
「鉈……って、分かるかな。枝打ちとか草刈りなんかに使う林業用の道具で、できれば大きめのやつが理想的なんだけど」
「ナタ……ですか?」
やはり、分からないようだ。メルティーアが首を捻っている。
そうだよね、鉈って日本語だもん。
能力のことをアビリティとかスキルとか言っているから、多分この世界の言語は英語に近いものなんだと思う。英単語で説明すれば、多分あたしが考えているイメージは伝わる。
鉈を英語で言うとハチェットって呼ぶけど、ハチェットには園芸用とか林業用の斧ってイメージもあるから、下手をしたら斧を渡されかねない。あたしの腕力じゃ斧なんて持ってても重くて扱いに困るだけだ。
何か、似たような形をした道具は……
あたしは必死に頭の中にある知識の本のページを捲った。
……そうだな、これなら……
「うんと……それじゃあ、マチェットは分かる? 片手で持てる剣みたいな道具。鉈っていうのは、あれをもう少し四角くして刃の部分を厚くしたような道具なの」
「マチェットですか。それでしたら分かります。それの刃の部分を厚くして、四角くしたものなのですね? 分かりました。お待ち下さい……」
そう言って、メルティーアは左手を軽く体の前に翳しながら目を閉じて、何やら念じ始めた。
彼女の掌の前に、白い蛍の光のようなものが集まっていく。それは次第にひとつの形を作っていき、やがて、一振りの刃物になった。
刃渡りは五十センチほど。柄の部分は白い色の木製で、握りやすいように包帯のような布が巻かれている。刀身は黒く、そこそこ分厚さがあり、刃の部分はよく研がれていて銀色に輝いている。形は角の部分が若干丸みを帯びてはいるが、長方形に近い形だ。
あたしが学校で使っていたあの大鉈、あれと殆ど同じものである。
この世界にはメルティーアの口ぶりから察するに鉈が存在しないらしいから……おそらく、これは彼女があたしが言ったイメージを元に生み出したものなのだろう。魔法みたいな力が存在している世界だし、彼女の主張通りなら彼女は神なのだから、そういう能力を持っていても不思議ではない。
「……これで、どうでしょうか? 貴女の仰る通りに形をイメージして作りました」
彼女から渡された鉈を受け取るあたし。
手にした鉈は、見た目に反して随分と軽かった。刃の部分は鉄に見えるけど、ひょっとして鉄ではない別の金属で作られているものなのだろうか。
しかし刃に厚みがあるのだから、鉄並みの切れ味は期待できるはず。
「ありがとう。注文通りよ」
あたしは礼を言って、鉈を右手でしっかりと握った。
あたしが鉈の出来栄えに満足している様子を見て、役目は果たせたと思ったようだ。メルティーアは穏やかに微笑みながら、言った。
「それでは……勇者よ。貴女を下界へと送りましょう。必ずや邪神を討って世界を平和に導いて下さい。私たちは、此処で貴女の旅の無事をお祈りしております」
これで、彼女の女神としての役目は終わりらしい。彼女はあたしを邪神の存在する下界とやらへ送り出そうとしているようだ。
あたしは口元に笑みを浮かべながら、それに対してはっきりと言った。
「……本当、自分のことしか考えてないわよね。どいつもこいつも」
「…………?」
転送用の魔法か何かだろう。力を掌の先に集めようとしていたメルティーアが、目を瞬かせてあたしに注目する。
あたしは口の形を弓なりに固定したまま、淡々と続けた。
「他人を犠牲にして、自分は傍観してるだけ。助けを求められても知らん顔してばかり。何で自分でやろうとしないの? 人を利用するの? 本当、うんざり。邪神を倒せだなんて、そんな命の保障がない危険な仕事をあたしが笑って引き受けると思ってた?」
鉈を握る掌に力を込めて。あたしは少しずつ、メルティーアへと近付いていく。
「あたしは自分が勇者だなんて思ってない。他人の言葉なんて信用してないの。もちろん、貴女が神様だってことも信じてない。神様ってのは、困ってる人に救いの手を差し伸べる全知全能の力を持った存在のことを言うのよね? 邪神討伐を人間任せにして自分は傍観を決め込んでるような奴が神様なわけないじゃない。嘘をつくならもっと現実味のあることを言いなさいよね」
「勇者よ……一体、何を……?」
近付いてくるあたしから滲み出ている感情の正体を得体が知れないと感じたのか、メルティーアが僅かに後ずさる。
でも、もう遅い。あたしは手を伸ばせばすぐ届くところにまで来ちゃったから。
自称女神様。貴女の勘は正しいよ。貴女が今感じているものは、貴女にとっては良くないものなのだから。
あたしは笑ったまま、右手を大きく振りかぶる。
「もしも貴女が本当に神様で、あたしの力になってくれるって言うのなら──貴女の持っているその力、あたしにちょうだい? あたしが、有効活用してあげるから!」
力一杯振り下ろした鉈が、鈍い音を立ててメルティーアの頭に突き刺さる。
昔……村の子供たちが川の傍でスイカ割りをして遊んでいた光景を遠くから眺めていたことを思い出す。棒が当たって割れたスイカは、割れ方は綺麗じゃなかったけれど、中の実がとても赤くて瑞々しくて、まるで宝石みたいに輝いていてとても美味しそうだったんだ。
彼女の髪の陰から覗いたそれが、その時のスイカを彷彿とさせる鮮やかさを放っていて。
リヴが言っていたのは、こういうことだったんだ。味覚が変わって美味しく食べられるようになるっていうのは。
確かに、これは。
何て、美味しそう──なんだろう?
「……きゃあああああああ!」
小さな体から出たものとは想像も付かないほどに大きな声で悲鳴を上げて、リヴがその場から逃げ出した。
その背中を狙って、あたしは鉈を横に振るう!
「ぎゃ、っ」
潰れた声を発して、二つに分かれたリヴがメルティーアの隣に落ちる。
流石にここまで小さいと、綺麗に両断とまではいかなかったみたい。腹の切り口が肉を無理矢理毟ったみたいな形に引き攣っている。まあ、あたしが用があるのは胴体じゃなくて頭だから、そこまで気にする必要はないか。
あたしは鉈に付いた血を振るって落としながら、呟いた。
「……やっぱり、神様だなんて嘘じゃない。人間のあたしに、こんなにあっさり殺されるなんて。神様が聞いて呆れるわね」
メルティーアの血も、リヴの血も赤い。あたしと同じ、真っ赤な血。
足下に飛び散った血が、小さな水溜まりを作っている。その中に、メルティーアが右手に抱えていた白い本が落ちていた。
せっかくの綺麗な表紙も、血を被って台無しね。
あたしは落ちている本を拾い上げた。
すると、何処からか聞き覚えのある声があたしに話しかけてきた。
「……神を殺すか。お前は、本気で勇者たることを放棄するのだな」
あたしを此処に無理矢理連れてきて、メルティーアをあたしに会わせる代わりに何処かへと姿を消したままになっていたあの男の声だ。
あたしは半眼になって反論した。
「あたしは望んで此処に来たわけじゃないの。あたしの生き方はあたしが決める。誰にも指図される謂れはないわ」
「人間らしい身勝手な思考ではあるが……正論でもあるな。確かにお前には、神の意志に従わないことを選択する権利がある」
「……何を一人で勝手に喋ってるのよ。大体、貴方、あたしを勝手に此処に連れてきて置き去りにするってどういう神経してるわけ? 姿を見せなさいよ、貴方の能力もあたしが貰ってあげるから」
「それは不可能だ。私は生物ではない故、お前の
もう目の前にいる? 一体何処に?
辺りを見回すが、例の白い燕尾服を着た男の姿は何処にもない。
思わず小首を傾げると、それを滑稽だと思ったのか、彼は言葉を続けてきた。
「私は
彼の言葉に、あたしは思わず自分が持っている本に視線を落とした。
さっきから聞こえているこの声は……この本が喋ったものだったってこと?
口もないのに何処から声を出しているんだろう。
……ううん、そんな非常識な現象をあっさり受け入れるほどあたしは馬鹿じゃない。
実物の妖精が目の前にいたから此処が異世界だってことはとりあえず信じるけれど、異世界だからといって超常現象が何でもありだとすぐに納得してしまうのは早計過ぎる。実際はこの本は単なる本で、声の主は何処かこちらから姿が見えない場所に身を隠してあたしをからかっているだけという可能性だってあるのだ。
あたしは血の付いていない綺麗なところに、持っていた本を置いた。
「……貴方が、本? あたしを此処に連れて来た時は人間だったじゃない。本当にそうなら、証拠を見せてくれる?」
「心得た」
特にうろたえる様子もなく、あっさりと彼はあたしの要求を承諾する。
本が光り輝き、細かい煌めきの粒となって宙へと舞い上がっていく。元あった本の輪郭が消滅した光は、一瞬で人の形を作り上げ──
輝きが収まると、本を置いた場所から本は消え、代わりに先程あたしを此処に連れて来た白燕尾服の男の姿がそこにあった。
……確かに、本が人間の姿に変わった。目の前で何の仕掛けもない状態でそれを見せられた以上は、信じるより他にないだろう。あの白い本と、この白い男が同一の存在であるということは。
「この姿は、人の形を取ってはいるが厳密にはそう見せかけているだけのものでしかない。血も脳も存在しなければ五感も欲求もない。ある程度ならば知識を元に感覚の再現を行いそれに基づいて体の状態を変化させることは可能だが、私にとっては無意味に等しい行為だ。それをやれとお前が私に命令したならば、実行するが」
「……分かった。貴方が本だってことは一応信じる」
あたしが頷くと、彼は表情ひとつ変えることなく、すぐに元の白い本へと姿を戻した。
自分で動ける人の姿の方が不自由がないんじゃないかという疑問が脳裏をよぎるが、彼にとっては、本の状態でいることの方が普通なのだろう。ひょっとしたらあたしに殺されて食べられることを警戒しているだけなのかもしれないが。……いや、脳がないって言ってたし、それは流石にないか。
とりあえず、彼の相手は後だ。あたしにはまだ此処でやらなければならないことがある。
あたしは彼をその場に残したまま、床に転がったままのメルティーアの死体へと近付いた。
頭と向き合う形でぺたんと座り、先程の鉈の一撃で見事に割れているそこに両手を突っ込んで、中身を引き摺り出す。
前に見た生物学の本に載ってた絵の通りだ。本当に、こんなに複雑な形をしてるんだな……
掴む力が少し強すぎたせいか、指が食い込んだ箇所が潰れてしまっている……けど、きっと問題はない。どのみち口の中に入ってしまえば一緒なのだから。
あたしは塊の一部をもぎ取って、それを口へと運んだ。
これが人の脳味噌なんだ、という自覚が手の動きを鈍らせる。あたしは一体何をやってるんだろう、とも思う。
こんな人間としての倫理観がぶっ壊れたような行為で、本当にあたしはライトノベルの主人公みたいな存在になるのだろうかとも。
でも──きっとこれから、この行為はあたし自身が数え切れないくらいに繰り返すことになるのだ。そんな気がする。
地獄の底に垂らされた一本の蜘蛛の糸を必死に掴もうとするように、いつ幻想となって消えてもおかしくはない一抹の希望を求めて、手を伸ばして。
どうせ、今のあたしは死人と同じ。此処にはあたしを知っている人なんていないし、あたしが守りたいと思っている存在もない。あたしが何処で何をしようが、それを咎める奴もいない。
……ううん。そうじゃない。
認めさせるのだ。この世の全ての存在に、あたしという存在を。もう二度と、あたしを誰にも支配させないために。
どんな存在をも、神すら屈服させる力を手に入れて、逆に奴らを見返してやればいい。
かつてあたしが踏み躙られて全てを失ったように、今度はあたしが、皆を踏み躙ってやるのだ。
それが──あたしが心の底から求めていること。壊れたこの心にたったひとつだけ残った、形のある願望──
「……むぐ……」
口の中に広がるのは、ほんのり苦味を含んだ甘味。顎に力を入れれば、歯は何の噛み応えもなく口の中のものを細かく砕いていく。
ペースト状になったものを、一息に飲み込む。
『
唐突に、事務的な声が頭の中に響いた。
……今の声は……
あたしは、床に置き去りになっていた彼へと目を向けた。
あたしの視線に気付いたのか、彼がそれに応える。
「お前が能力によって獲得した能力を分析して、その結果を情報として直接お前の脳に伝えている。私が保有する能力による現象だ」
「……貴方の仕業ってこと? 今の、これ」
「私の役割は、所有者に神の英知を与えること。元の所有者であるメルティーアが死した今、一番に私を手にしたお前が私の新たな所有者となった。……私はただ、所有者が望んだ時に望んだ通りの力を与えているだけにすぎない。道具たる私をどのように扱うかは、所有者たるお前の自由だ」
「その言葉を素直に解釈すると……例えあたしが貴方をどういう使い方をしても、貴方はそれに対して一切文句は言わないし逆らわないってことで間違いないのね?」
「その認識で間違いはない。私の所有権を放棄したくば、私の所有権を放棄すると心の底から願って何処へでも放置すればいい。その時は新たに私を手にした者が新たな私の所有者となるだろう」
「……そう」
自称女神が作った、個人の人格を持った不思議な本。
淡々と受け答えて物事の処理をするだけの無愛想この上ない存在だが、彼が持つ力は何かと役に立ちそうだ。
あたしはこの世界に関する知識を殆ど持っていないから、それを確保できる手段は欲しい。どうせメルティーアとリヴから基本的な情報は得られそうではあるが、有事の際に助言をくれる解説者のような存在は傍にいてくれた方が有難い。
彼は、あたしの道連れで決まりだ。あたしにとって役に立たなくなるまで、使い潰してあげようじゃないの。
「だったら、決まりよ。貴方、これからはあたしだけの力になりなさい。あたしの質問には嘘偽りなく答えて、あたしの決定には逆らわないこと。分かったわね」
「心得た」
あっさりと承諾する彼。
まあ、彼は持ち主の命令には逆らえないように作られているみたいだから、今あたしが言ったことは彼にとっては全部ナンセンスな命令になるんだろうけれど。
でも、言質を取るというのは大事なのだ。これがないと、いざと言う時にあたしが困ることになるからだ。
「……それじゃあ、早速教えてもらおうかしら。あたしの持ってる能力に関して貴方が知っていることを全て答えて」
あたしは彼の発言が嘘でないことを確認する意味も含めて、彼に問いかける。
自分が一体何処までのことができるのか、それを把握しておくのは重要だ。あたしが取り返しの付かない状況に陥ることを防ぐためにも、まずはあたし自身があたしの能力のことを熟知している必要があるのだ。
彼が回答する。
「現在、お前が獲得している能力は二つ存在する。『魂喰』と『無限収納空間』、これらはどちらも
神も生物である……というのは意外である。神は限りなく人間に近い姿をしている偶像、みたいなイメージがあるから、生き物とは全く別の存在なんだとばかり思っていた。
だからあたしの手で普通に殺せた、というわけか……
「……もうひとつの能力は?」
「無限収納空間。収納用の亜空間を生成する能力だ。生成した収納空間の容量は無限で、また収納空間内では時間経過も起こらないため、収納空間に収納した品物が時間経過によって劣化することはない。また収納空間に収納している間は重量も発生しないため、肉体には一切の物理的負担をかけることなく無尽蔵に品物を運搬することが可能だ」
「成程ね」
相槌を打ちながら、あたしは食べかけを次々と口の中へと押し込んでいく。
『
『
『
『
『
『
ひとつ全てを胃の中に納めると、頭の中に怒涛の情報が流れ込んできた。
多分あたしが丸ごと食べきったから、メルティーアが持っていた能力を一気に吸収したんだろうけれど……
よく彼はあたしと普通に言葉の遣り取りをしながらこの情報処理ができるものだと思う。この情報量で彼自身は混乱しないのだろうか。
「……一気に情報が流れてくると結構うるさいわね。頭の中」
「お前が望むならば情報の提示を停止する。分析自体は行うので、問われた時に必要分だけ情報の開示を行う」
「別にいいよ、このままで。何を覚えたのかその場で分からないと後で困りそうだから」
「心得た」
次にあたしは、リヴの上半身を拾い上げた。
これだけ頭が小さいと、多分中身だけを綺麗に取り出すことはできない。
それならば……手間を省いて、丸ごと食べてしまうのが最も手っ取り早いだろう。
あたしはリヴの体に引っ掛かっていた服の切れ端を破いて取り外す。ついでに口に入れる時に引っ掛かって邪魔になりそうな羽も毟り取る。
随分と平坦な胸の存在をちょっとだけ可哀想に思いながら、頭の先からゆっくりと、体を丸ごと飲み込んでいく。奥歯で噛み潰すと、ぱきんというちょっとだけ硬いものが砕ける音が口の中から聞こえた。妖精にも骨ってちゃんとあるんだね。
『
『
リヴから手に入ったのは、二つだけか。
まあ、メルティーアは神だからね。一度に大量に能力が得られる方が珍しいか。能力が手に入っただけ良しとしよう。能力を持っていない奴がいる可能性だって十分にありえるわけだし。
食べたものをすっかり飲み込んで、あたしは静かに立ち上がる。
結構な量を食べたと思うのに、満腹感は殆ど感じない。能力に分解されて吸収されてしまったのだろうか?
あたしは床に置きっぱなしになっている彼を拾って、小脇に抱えた。
「もう此処での用事は済んだわ。此処から出たいんだけど」
「先程獲得した『神界転移』を発動させるといい。神界転移とは下界と神界を往来するための能力だ」
「……能力の使い方、分からないんだけど」
「頭の中で階段を下りるイメージを描いてみろ。それで下界に転移できる」
能力の効果だけじゃなくて使い方まで丁寧に教えてくれるのは助かるね。この分なら、能力に関係しないこととかも訊けば教えてもらえそうだ。
あたしは言われた通りに、頭に大きな石造りの階段を思い浮かべてそこを下っていく自分をイメージする。
足の裏に感じていた床の固い感触が薄れる。視界が光で満たされて白んでいく。
幾分もせずに、あたしの姿はその場所から完全に消失した。
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