第4話

空き家の前には僕がセットしておいた鏡がぽつんとあった。


「アレ…かな?」


空き家のくたびれた風情に鏡の新品感がハンパない。

ヤバい、ばれるかも。


「そ、そうだね…」


僕らは鏡の前まで行ってみた。


「誰から覗く?」


「怖いから、二人でせーので覗こうよ」


「わかった」


僕は鏡を拾い上げ、胸のあたりで止めた。

二人、肩をならべて呼吸を整える。


「なんか、ドキドキするね」


うん。いろんな意味で。

また、カンナのいい匂いが鼻腔をくすぐる。

僕はクラクラするのを必死でこらえながら

平気なフリで言った。


「じゃあ、せーので行くよ。せーの!」


僕は鏡を持ち上げて、二人の顔を映し込んだ。




スパン!




障子を思い切り開けたような音と共に

一瞬、辺りが真っ白になった。

次に視界がハッキリした時には

辺りは明るく、朝になったようだった。

そして、目の前の家は空き家ではなく

立派な新築の戸建てに変わっていた。

周りの風景も見慣れない街並みで…

どういうこと?




「いってきます!」




誰かが玄関から出てくる気配がした。

僕らは咄嗟に物かげに隠れた。


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