這い寄るモノ

英王

這い寄るモノ

 これは私の体験した話だ。



 私が小学生の高学年にもなった夏休みのころ。家族と一緒にリビングで夜に某怪談番組を見た。


 その日、風呂に入って、シャワーを浴びていると、背後に気配を感じて振り返るが、誰もいない。


 カーテンの隙間から見える暗闇から誰かに覗かれているような気がした。ベッドの上で寝転がると、半開きのままになった箪笥があり、そこから、また誰かに覗かれているような気がした。

 

 サイドテーブルからデジタルの目覚まし時計が床に落ちた。拾おうにも、ベッドの下から、真白な手がはい出てきそうで、怖くて拾えなかった。


 夜中になると、ベッドの下から手がはい出てきて自分をつかんで連れ去るように思った。怖くて真夏なのに、頭以外すっぽりと掛布団で覆った。そしてやっと安心して眠れた。


 目が覚めるといつも通りの朝だった。あぁ、やっぱり、幽霊なんて嘘だったんだと安心した。



 いつしか私は大学生になった。大学生の私は、背後にいつも誰かがいるような恐怖を感じ、カーテンの隙間を恐れ、開いたままの箪笥に覗く暗闇を怖れ、ベッドの下の誰かを畏れ続けている。

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