あたしは巫女、椿 麗(つばき れい)

小島 理零(こじま りれい)

第1話 不思議な巫女との出会い

 下北沢 亮太(しもきたざわ りょうた)十七歳。

 何処にでもいるごくごくありふれた高校二年生。

 そして、何処にでもあるごくごくありふれた悩みを抱えていた。


『告白すべきか、告白せざるべきか』それが問題だ。


 亮太は財布から銀色に光る硬貨を取り出した。

「危ない、危ない、五百円玉じゃないか」


 取り出した硬貨を財布にしまうと、代わりに百円玉を取り出して賽銭箱に投げ入れた。鳴り響く神社の鈴の音。その音色をバックに、「どうか、鮎沢さんとの恋が成就しますように・・・」亮太は懇親の思い込めてお祈りした。


「お前、賽銭ケチるなよ」


 背後から聞きなれぬ声が聞こえて来た。振り向けば、そこには巫女の姿が。

 正月でもなければ何かの祭り時でもない季節外れに姿を見せた巫女。

 何処の結婚式場からでも抜け出して来たのか、それともコスプレオタクか。


「お前、このままだと振られるぞ」

「うるせぇー消えろ」


 縁起でもない、神様の御前での発言。例え嘘であっても願い事と誤解されて真実になったらたまらない。まあ、それでも気を取り直して、思わず怒鳴ってしまったことに気づいて謝ろうとしたが、既に巫女の姿は無かった。


「なーんだ、錯覚か」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る