JK侍、東へ歩く

加湿器

さて、まずは似合わぬ筆を執ることとした、そのいきさつから始めよう。


わたくしもいまや還暦を迎え、いまだ家族の一人も居らぬ身である。

一線を引いた後も、今日まで後進の導き手として尽力してきたつもりであるが、もはや衰えは誤魔化すことも侭ならぬ。

門弟に何か残してやれるもののひとつもないものかと思索していたところ、年若い友人から、書の一つでもしたためては如何かと勧められた。


古い知己にはてんで似合わぬと笑われることとあろうが、さいわい眼はまだ霞んでおらぬ。一つ、わたくしの見、聞いた懐かしき旅路を、記しておこうと思う。


前置きの長くなったことだが、先ずは一番、旅の思い出を記そう。

あれは、そう。

わたくし、しま 佐織さおりが西海州の女子J剣生Kであった、夏の日の事。

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