記憶の底
来条 恵夢
第1話
祖父の死が知らされたのは、何の変哲もない夏の昼下がりだった。
夏休みで昼に入っていたバイトの休憩時間、珍しい父からの着信とメールに折り返すと、いつものようにどこかぼんやりとした声で、それでも今度ばかりは本当にぼんやりしているように、
「――うん。わかった」
案外淡々と、短い電話を済ませる。そのまま、店に出ている店長をつかまえ、休みの段取りをつける。
元々、盆には休みを入れていたから、被害は少ないだろう。
「今日はどうする」
「――え。ああ…。帰っても荷造りするくらいですから、時間まで働きますよ」
「そうか。無理するなよ」
別に、そんなつもりはなかった。
ただ。まぶしく光る店の外に目をやりながら、夏の予定が一つ、意外な形で消化されることになったのかと、奇妙な感想を得た。
――今年の夏は、祖父の家に行くつもりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます