勇者の仲間の解雇録

せいじゅうろう

第1話

勇者ゼロは、魔王を見つけるために旅をしている。


しかし、勇者とはいえ一人の人で全てを解決できるだけの人間ではない。


故に、勇者には仲間が必須となった。

時には戦力の増強、時には作戦を組むための知恵を借りるため。

場面場面によって、必要な人材は変わってくる。

時には、断腸だんちょうの思いで決断しなければいけない。

今でも、苦しそうにしていた顔が頭に浮かぶ。

あいつは、本当に苦しそうに、残念そうに私に話をもってきた。


「すまない、幼なじみのお前にはとても言いずらいんだが……。」


ああ、やはりなこれ以上言わすのは酷というものだろう。


「いや、分かっている。

 これからの戦いに私では力になりそうにないからな。

 もう、私がやれることもなさそうだし、どこかで支援活動をすることにするよ。」


「本当にすまない。

 やはり、常に俺が守りに入れるわけじゃないからな。

 二人きりのときなら何とかなったんだが、5人と増えてしまって、さっきの戦闘でも危なかったからな。」


「ああ、私のためというのはよくわかっている。

 スキルも大して役に立たない"地図"だけだしな。

 懐かしいな、昔はこのスキルのおかげで森の奥に入り込んだゼロを見つけたもんだがな。」


 少し、ゼロの顔が赤くなっている。

 昔の話はちょっと恥ずかしいかね?


「う、うるさいな。

 お前だって、野犬に襲われそうになって泣きそうになってたじゃないか!」


「あ、え、お、そ、それを言うか!?」


「なんだ! やるか!!」


「…………いや、やめておこう。

 敵わんのは分かっているしな。

 ま、荷物もまとまっているし、この町から別行動するよ。

 そんじゃ、またな。」


 自分の荷物から、パーティー用に別に入れていた資金だけゼロに渡して私はこうして勇者パーティーから抜けたんだ。


---

「というのが、ゼロとの別れだった。

 わかるか、あいつは稀に見る"剣士","運命","破魔"なんて最初から勇者になるために生まれてきたような奴だった。

 その心根も、優しすぎたんだな。」


「その話は、何度も聞きましたよ。

 そんなことはいいから、仕事してくださいよ、王様~。」


「何を言う、話をしながらでもできる仕事ではないか。

 それに私は王様ではない、精々せいぜいが大将だろうよ!」


 それは、私の偽らざる気持ちだ。

 今やっていることを考えれば、軍師とかがいいのかもしれんが、なんかな、卑怯な響きがある。

 それは、勇者の幼なじみに相応しくない。

 大将だと、なんか響きがいい、勇者の幼なじみに相応しい感じもするしな。


「何言っているって、こっちの台詞ですよ。

 ここは、あんたが作ったんだから、あんたが国王でしょ?」


 まったく、こいつは何度言っても理解しないな。


 「いいから、大将と呼べ!!」

 「へいへい、ファーストたいしょー」

 

 ふぅ、これで一週間は大将で通してくれるだろう。


 今更ながら自己紹介しておこう。

 私はファースト、この大陸唯一の勇者支援国家を作った男だ。

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