35.伝導率

伝わりません

あなたの気持ち

伝わりません

あなたの気持ち

伝わりません


私しわしわのお婆さんの手の甲つまんで喜んでいたのをお婆さん喜んでいた

北向きの風を撫でながら窓ガラス青と白のホルスタイン

歌われた気持ちを汲み取りかねて寝て待て寝て待てばっかりしてて

せめてめてゆんで結んでのっしのっしと歩きたかった

蜜を吸う


伝わりません

あなたの気持ち

伝わりません

あなたの気持ち

伝わりません


伝わりませんが残ってしまう気持ちの行いが私の足にひもを括る

かろうじて逃れたと思ったらこんどはこっちが空っぽになってしまった

マスカラ落とした街角で門出を呪っていた昨夜

バイオリン弾きの彼のもとへ行けずに引き返した翌朝の胸焼け

薪を割る


伝わりません

あなたの気持ち

伝わりません

あなたの気持ち

伝わりません


着物をおろしたら戸棚から落ちてきた記念日が立てた埃にむせた

ムッシューアンチピリンだかテストだか知らない人が蝙蝠にぶら下がっている

キウイの果汁に噴出した偽記憶を忘れて鍵を間違えた

家出していく男の子が「ビー玉を知りませんか」と道を尋ねている

ラムネ眠る


伝わりません

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る