29.直立

ただここで立ちつくしていた俺は

そのまま一生立ちつくして終えた


ただここでと言ったね

こことはどこか

俺は問うことなく立ちつくして終えた


こことは

と問うことなく

と口にして終えた


俺に口はなかったが


と言ってみると

なるほど私に口はないらしいと終えた


自称が変わったということはそこに作者の意図があるのだろう

と考えるのがふつうだろう

あるいは

迂闊な作者と失笑を買うだろう

あなたはどうだ


しかし私ははじめから

ただ立ちつくしているっきりの一生だった

それだけの一生だった

ここに

私の一生


ここ

とは

と問う

そこを

問う

おまえ

どこでどこをどう問う

問うと答案が

貰えるのか漏れてくる

陽射しもない

脚を切る草もない

ここ

私はいつまでも立っていた

立っていた

ここを撤退していく者の背中の長城を

ながめつくしてもうどこまでもなにもない

立って

ここ

終え

一生

立って死んだって

立ったまま待って立っていた

あなた

待って

終え

ここで

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