28.殻っぽの街

ほうけた昼は漫然と

カナブン飛んだ蟻這った

クモ網張ったアワダチソウの群生に

自殺していく街がひとつ


生い茂ったコンクリートたち

明るい気流を呼吸する

あくせくする日は遠退いて

幸せの朽ちはてにたそがれている


七階の窓枠に根を張った草花がゆれている

希釈されながらも花粉はひろくそよぐだろう


犬小屋は庭木に隠された

宇宙を思わす文旦の実りに枝はしなり

ついばむ鳥のくるたびにゆっさゆっさ


もうじき土に還るだろう

どこかでカエルも鳴いている

もう見に行く脚は失った

腹は空腹で満たされて

やがてきれいな骨だけ残して還るだろう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る