26.嫉妬

言葉をなくした身体を抜けていく風には

花の粒子が微量 縫い込まれていた

匂いのするほうへ

振り返ったが香源はなく

棄てられた荒野に無意味なつむじが巻いていた

言葉をなくした身体が来し方より連れてきた

私生児がそれに振り落とされたのかもしれなかった

その子を産み落とした見知らぬ母の

栄華は沖の島

断崖より見下ろせば朽ちた小舟の一艘が

一層かなしく揺れている

揺れているのは波のため

瞳を潤すのは枯渇した

感性からみた沖の花に傷んだためだ

手持ちぶさたな手を垂れた

言葉をなくした身体は鳴った

ささやくらしく聞こえる身体の音はしかし

異語によってただ苛んだ

しかたもなく断崖を降りて

流木など拾ってはみて

しかし悲しい異語は異語のまま

さよなら野望 見えるのはもう海ばかり

島もなく まして橋などあるはずもない

荒野のつむじに巻かれる言葉をなくした身体が一本

流木ばかり拾っている

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