第30話・飛翔とワイクは捕われた人々の解放を約束する
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飛翔はワイクと共にスプリングを出て森から離れた町を密かに巡った。
アキがリバティーを破壊する際、近くの町を激しく蹂躙(じゅうりん)したことから、レジスタンスはいまだ健在でアルマと対抗する意思が変わらずにあると伝えたものの町の反応は冷淡だった。
「こんなところをアルマに見られたら、この町まで破壊される!」
と、体を突かれて何度も町の門を閉められた。
「次を当たろう」
そのたびにワイクは飛翔を励ました。
とある町でまた門前払いにあったとき、近くの畑でひとり鍬をふるって畝を作っている老人を見つけた。
ワイクと見交わし、老人に歩み寄り少し距離をとる。
声をかけた。
「おれたちはレジスタンスです。町のために何か手伝えることがあったら言ってください」
老人は手をとめない。
「今さら、あんたたちに何を期待しろって言うんだ。アルマと戦うでもなく、町も護るでもなく、ただ森にこもっているだけだ」
飛翔は開いて見せた手を拳にした。
イシュリンはアルマと戦うのではなく、魔力をかさにして支配することを止めさせようとしている。
アルマから攻撃をちらつかされて搾取される存在の町からすれば、生ぬるいと思われても仕方がなかった。
それでも近寄ってイシュリンの意図を伝えようとした。
老人は拒むようにしゃがんで畝を整える。
「アルマはこの町から働き盛りの男たちを連れ去り古都マンゲールで働かせているという。それを伝え聞いたところで、百キロメートルも離れた場所へ行き 魔力を持つアルマと戦い取り戻すことなんて、わしらには無理な話だ」
種をまくための溝を手で掘る。
「レジスタンスがそれでも町のために役立ちたいというのなら、連れ去られた者たちを解放してくれ。この町に戻してくれ。それができたのなら、この町はあんたたちを信じる」
飛翔は糸口を見つけた気がした。
「マンゲールですね」
老人に確認した。
「捕らわれている人々を必ず解放します。レジスタンスを信じてください」
〈続く〉
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