第17話・ネイチュについて

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 ネイチュという世界は森とそれ以外でできている。


 森は、ブナやナラの木が百メートル以上も伸びて密集し鬱蒼としている。


 ネイチュの八割をしめているが、日当たりも悪く、基本的に人が住むところではない。


 二割が森ではない部分だ。


 その中には岩だらけの荒野や腰まで浸かる湿地、水に乏しい砂漠も含んでいる。


 それらを除いた平野に町がある。


 元々、町は、最初に神殿が作られたところへ人々が集まってできたものだった。


 今はほとんどの町が、強い魔力を背景にしたアルマ帝国の統治下にある。


 皇帝の命令で五年前、それまでのネイチュの神ではなく皇帝を信仰の対象とすることになり、神殿は廃止になった。


 神官はただ一人、――魔力ではなく“神の加護”による強いチカラの持ち主で、森へ逃れたイシュリン――を除き、全員が処刑された。


 我々は町の忠誠心を試すために内通や密告を奨励した。


 それが著しく低いと見なされた町は、皇太子アキの妃であり強い魔力を持った私が、人々を追い出したあとで、町の周囲をぐるりと歩き、魔法陣を描いて破壊した。


 私は“破壊の妃”と呼ばれ人々から恐れられた。


 そこに住んでいた者たちには強固な忠誠を誓わせることで町を再建させ、あるいはアルマの労働力として別の町へ連れ去った。


 それでも、我々の統治に不満を持ちネイチュの神を信仰する一部の者たちは、面従腹背して最後の神官であるイシュリンが率いるレジスタンスを密かに支援していた。


 そこで、我々は、森に潜むレジスタンスの基地であり、彼らがリバティーと呼んで活動の拠点にしていた巨大なドームを破壊した。


 人々に、信仰していた対象も、我々アルマを倒してくれるのではないかと密かに期待を寄せていた存在も、ともになくなったのだと思い知らせることができた。


 大きな問題が解決し、私は胸がすいた。




 〈続く〉

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