第44話 覚悟。
…ああ、どうしよう。
店員が気を遣って入れ直してくれた、2杯目のコーヒーが冷めてもまだ答えは出ない。答えは、本当は分かっている。自分が観念すればいいだけのこと。学は、よく待ってくれた。春奈にも太鼓判を押された。…でも、想像つかない。レディスコミックでを読んで、それがどんなものか、少しは知っているつもりだが。
「今日は帰ろうかな。」
学にガマンさせる泊まりなら、帰った方が良いかもしれない。そっと席を立ったときにLINEが届いた。学からだ。
『話したい。どこにいる?』
…どうしよう。何を話せば良いの?
『ミスドだけど…。』
『そこにいて。』
一分もしないうちに学が現れた。とりあえず急いでオーダーしたものをトレーに載せて、向かいの席に座る。
…気まずいな。怒ってるだろうな。
瑠奈はうつむいたままだ。
「顔、見せて?」
学の優しい声に、目尻がじわっと熱くなる。
「…もう、呆れてるよね?」
涙声で絞り出すように言う。
「そんなこと、ないよ。俺、無神経だったよな。…まあ、クッションはショックだったけどな。」
顔を上げるとバツが悪そうに笑う学と目が合った。途端に涙が溢れて、学が困った表情かおをする。
「ごめん。乱暴なことして。」
「さあ、帰ろう。」
「え…?今日は、学のとこじゃなくて、家に帰るよ。また、ガマンさせることになるでしょ?」
「瑠奈がいない方がつらいとしたら?」
イタズラっぽい
「またクッション投げちゃうかもよ?」
「今度は、よけるから大丈夫!さ。ドーナツ買って帰ろ!」
学は瑠奈の手を引いて立ち上がる。
学の強引さをいいことに、瑠奈は学についていってしまった。離れたくなかったから。
「瑠奈、おやすみ。」
学が抱きしめて唇を重ねる。
「ん…。」
瑠奈も抱きしめる。唇も腕も離したくなくて、力をこめる。学も唇を離そうとしないまま、手が瑠奈の喉から襟元をそっと撫でる。白い肩がのぞいて、学はハッとして、手を離す。
「ごめん…。」
瑠奈が手を握って、襟元に戻す。
「瑠奈?」
「離さないで。」
学の目を見つめて、抱きしめる。この時、初めて、瑠奈から唇を重ねた。
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