第41話 ご一緒させていただけないでしょうか。

「よかった。よかった。振袖の瑠奈と歩ける!」


翌朝の通学途中。学は上機嫌で繰り返す。瑠奈も昨日とは打ってかわってご機嫌だ。昨夜、時絵の振袖を羽織ってみて、すっかり楽しみになっているのだ。

「で、どんなのにするの?」

「お母さんのかもしれないし、レンタルで気に入るのがあったら、それにするかもしれない。」

「へえー。俺も一緒に行きたいな…。紋付袴を借りようかと考えてるんだ。」

「話して、みようか?学のことは、…知らないワケじゃないし。」

“気に入ってるらしい”と言いそうになって、慌てて違う言い方に変える。

「いいの?」

「うん。…あ。そっか。」

…付き合いだしたこと、言うことになるな。お母さん、びっくりするかな。

「どした?」

「付き合ってること、話してないから…。」

「話したら、ダメなの?」

「わざわざ話すなんて、照れ臭!」

「俺から話そうか?コソコソすんの、イヤだし。」

「いいの?」

「いけない理由がない!よし!明日の朝、迎えに行くから、その時に話すよ。いい?」

「は、ハイ。」


…すげーな、コイツ!この潔さ、お母さんと似てるかも。

瑠奈の方がたじろいでしまう。が。母と気が合いそうな気がするので、それほど不安でもない。


「おはようございます。吉野学と申します。瑠奈さんとお付き合いさせていただいております。」

翌朝のこと。学は本当に時絵に挨拶していた。


「え?あら。そうだったの?こないだ、違うって言ってたじゃないの。」

「あの時は違ったの。」

瑠奈が頰を赤らめて言う。

「そうだったの。振袖も、学くんの影響だったのね。」

時絵は、やたら楽しそうに言う。

「そこ、突っ込まないで!」

「学くんのおかげだわー。夢だった、瑠奈の振袖が見られる。」

「あの…。そのことなんですが。僕も紋付袴を着ようと思っているんで、貸し衣裳店にご一緒させていただけないでしょうか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る