第38話 無理しないで。
…あれ?ここって?
瑠奈は気がついたら横になっていた。体には毛布がかけられている。
「起きた?」
声がする方を振り返ると、学がマグカップを二つ持って瑠奈の隣に腰を下ろし、一つを瑠奈に渡した。ル・クルーゼのそれは、お揃いのカシス色。手を温めるように両手で包み込む。マグカップの温かさを手に感じながら湯気を眺める。
「続き、見る?寝ちゃったから、止めたんだ。」
学の部屋でDVDを見ているうちに眠っていたのだ。
「あ。そうだね。」
続きを観ていても、学の体温が気になって、ストーリーが頭に入ってこない。
学が瑠奈を抱きよせて唇を重ねる。学の舌が瑠奈の口に入ってきた。
…いよいよかも、しれない。
怖くて体が硬直する。学がびっくりした様子できく。
「どうしたの?」
「エッチするの?」
「は?」
学がびっくりした声を出す。
「普通、するんでしょ」
「怯えて固まってる相手を抱くような男だと思ってるわけ?。」
顔を上げると、学は怒った
「普通は、このくらいの年齢としだったら、みんなエッチしているんだよね?」
怒った学にたじろぎながらも、上目遣いに言う。
「そんな
「ごめん。何もわからないから。」
「無理しないで。そのままの瑠奈がいいんだから。」
学は唇を重ねてから、その後、優しく抱きしめ頬をすり寄せる。
「怯える瑠奈を抱くよりも、こうしている方が幸せだよ。瑠奈が自然にそうしたいと思ってからでいいよ。」
…よかった。まだ、怖いんだもん。
頬をくっつけたまま、ホッとする。瑠奈は、学とこうしているのは心地よいけど、まだ覚悟ができていないのだ。
「お願いがあるんだけど…。」
瑠奈を家まで送る途中、学が遠慮がちに言う。
「何?」
「成人式、振袖を着て欲しいんだ。一緒に成人式に行きたい。」
「私が振袖そんなもの着たら、みんな気絶しちまわぁ!」
あまりの驚きに、久しぶりに乱暴な言葉遣いが出てしまった。
「イヤ?」
「キモい!想像つかねーよ!」
「一緒に歩きたいんだけどな。」
「仮装か妖怪と歩くようなものだぞっ!」
学はふわりと肩を抱き寄せる。瑠奈の額に顎をくっつける。
「ここだけ、少し無理して?」
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