第30話 照れる。
…どうしよう。びっくりして声が出ない。
「友達じゃないと、ダメ?」
不安げに学が覗き込む。見慣れているはずの学がどこか知らない人に見える。
瑠奈は、声が出ないまま、慌てて首を横にふる。
「良かった!」
ホッとした声で言うと、瑠奈を再び抱きしめる。
…こんなに、温かいんだね。
いつも一緒にいて、すぐそこにあった学の胸は広くて温かくて。聞こえる鼓動が心地よくて。優しい鼓動が瑠奈のモヤモヤを一気に溶かした。
瑠奈が学の腰に腕を回した時、学が瑠奈に唇を重ねる。
…キスってこんな感じなんだ。
顔が熱くなるのがわかる。唇を離すと、照れ臭くて顔が見られない。思わず胸に顔をうずめる。
「顔、見せて。」
「イヤ。」
もう照れ臭くて涙が出そうなのだ。
「どうして?」
「恥ずかしいから!見るな!」
「照れてるのか?意外だな。かわいい。」
学がクスクス笑いながら、また抱きしめる。
「笑うな!意地悪!」
「さ。帰ろう。」
瑠奈の背中をポンポンと優しくたたく。
学のマンションまで、手をつないで歩いている間、瑠奈はずっと下を向いていた。
「顔、あげて。」
「イヤ!」
また学がクスクス笑う。
マンションに着くと、また抱きしめられた。
「顔、見せてよ。」
「イヤ。恥ずかしい。」
「どうして?」
学もなかなかしぶといが、瑠奈は赤面しているであろう顔を見られまいと必死だ。
「笑わない?」
「笑わないよ?」
「は、初…めて…だったから…。」
声を絞り出すように言う瑠奈に、学はビックリして、言葉を失う。
…嘘だろ?キスすら初めてだった?
驚いていると、恐る恐る顔を上げる瑠奈と目が合う。
…可愛い!こんなに照れてる。
「ど、どーせ笑うつもりなんだ?」
「笑うワケないだろ!可愛いなあ!」
学は思わず抱きしめると、瑠奈がジタバタする。
「何すんだよ!可愛いとか、意味不明!」
「そのままで、いいよ。照れてる瑠奈って可愛い。」
「ぎゃん!」
学が唇を重ねると、瑠奈がびっくりして悲鳴を上げる。
「瑠奈ー。可愛い!」
学は瑠奈を抱きしめてはキスをする。瑠奈は照れまくりでパニック状態だ。
「可愛いとか、やめろよ!」
「そんなに照れると、押し倒すぞ?」
「ひっ…!」
学の声色が変わって、瑠奈はドキっとして顔を上げた。
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