第10話 兄貴。
「はぁ?兄貴っぽい?」
「うん!姉貴っていうより兄貴!」
浩司が嬉しそうに言う。浩司によれば、“普通の姉貴”というのは、オンナオンナしていて近寄りがたいのだとか。
「ふーん、そうなんだ。」
瑠奈はあまり興味なさそうに相槌を打つ。
「そーだ!浩司。ポテトチップスない?食いたい!」
「あー。あるよ。持ってくる。」
浩司が出してくれたポテトチップスをつまむ。あぐらをかいて、ビールを飲む2人は、まさに“兄弟”である。
「浩司って、彼女いないの?」
「いねーよ。俺、モテないもん。姉貴は?時々迎えに来るあいつ、彼氏?」
「学のこと?ただの友達だよ。」
「マジで?彼氏だと思ってた。」
「あー!そのテの話題も
「ケンカでもしたの?」
「んー。そうじゃねーけど、ちょっとね。」
言ってるそばから、瑠奈のスマホが鳴る。学からの電話だ。しかし、今は話したくない。
「…出ないの?」
「出ないの!」
…出たくない。今は話したくない。わかっていた。異性の友人間というのは、どちらかが相手を見つけたりするとジャマになることも。
「浩司!」
「なんだよ?」
いきなりの瑠奈の声にビクッとする。
「もう一本飲め!オカンには黙っといてやる!」
「はい…。」
勢いに飲まれて、差し出されたビールを受け取る。
「ホラ!乾杯すっぞ!」
「はい…。」
浩司がプシュッとプルタブを開けるのを見届けた瑠奈が叫ぶ。
「兄弟の契りに、カンパーイ!」
浩司にしてみたら、瑠奈はもう兄貴だかオヤジだかわからない。酔いがまわり出した頭でぼんやり考える。
…高校生の弟に酒を飲ませる姉を持って、俺は幸せなんだろうか?高校生の弟に「もっと飲め」と酒をすすめる姉貴は、良い姉なんだろうか?
また瑠奈のスマホが鳴る。きっと学だろう。
「やっぱり出た方が…。」
「いいの!今日は話さない!話したくない!」
そう言ってぐいっと飲み、ぷはーッとやる。
…姉貴のこういうの、ずいぶん前にあった気がするな。
浩司の脳裏にかすかな記憶がよぎる。いつのことだったろうと考えているうちに、カクンと意識が途切れた。
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