第3話 「今日、何時まで?」

『今日、講義何時まで?』

昼休みに学からLINEが入った。

『ラストまで。』

『ドリンクコーナーで待ってる。』

『いいけど、バイトの日だから、ゆっくりできないよ?』

『いいよ。』


いつものやりとりをしていると、向かいに座っている友人、春奈から声がかかる。

「今日も彼氏と待ち合わせ?」

「彼氏じゃないよ。友達だもん。」

「はあ?あんだけ毎日のように一緒にいて、彼氏じゃない?あり得ないでしょ?」

「だって、ホントに彼氏じゃないんだもん。」

「あんた達、ラブラブで有名なんだよ?知ってた?」

「はあ?その方があり得ない!」


瑠奈自身も不思議だと思っているが、学は気を遣わない楽な友達なのだ。


一方、学の方でも…。

「彼女か?いいよな〜。学はあんな可愛い彼女がいて。」

大学付近のファミレス。ランチをしながらLINEでやりとりをしていたら、一緒にいた友人の拓也が言う。

「そんなんじゃないよ。瑠奈あいつ、性格は男だし。一緒にいて気が楽なんだ。」

「知らないのか?お前たち、有名なカップルなんだぞ。」

「あんな男みてーな奴とカップルにされてたまるか。」

「本当のところ、どうなんだよ?」

「何が?」

「お前、そばにいるために友達という立ち位置をキープしてるんじゃね?」

「バカ。そんなんじゃねーよ。」


…俺が瑠奈に気があるなんてあり得ない。あり得ない。

「じゃあさ。」


拓也がイタズラっぽい表情かおで切り出す。

「僕が瑠奈ちゃんにアプローチしても、構わない?」


「いいけど。お前、趣味悪いな。」

「お前の方がおかしいぞ。知らないのか?瑠奈ちゃん人気なんだぞ。お前の存在があるからみんな近づかないけどな。」

「世間には瑠奈あいつが女に見えるのか?」

「だーから!見えないお前の方がおかしい!」

拓也の顔を見ながら学は悩んでしまった。


瑠奈あいつが可愛い?モテる?大食いだし、大口あけて笑うし、あぐらかいて煎餅をバリボリこぼしながら食う奴だぞ。俺の部屋で寝っ転がってビール飲んではイビキかいて昼寝するし。男というよりはオッサンだぞ。


学は本当のことを拓也に話そうかと思ったが、拓也の夢を壊しては、という思いと、瑠奈への友情から、話すのをやめたが、やはり釈然としないものがあった。

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