Meet up~待ち合わせる~

日向 七帆

第1話 いつものように。

ピンポーン♩

瑠奈はいつものようにインターホンを鳴らす。学のマンションに来たのだ。お互いに暇な日はこうして瑠奈が呼びに行ったり、学が迎えに行ったり。

返事もなくガタゴトという物音の後、学がドアの隙間から顔をのぞかせる。

「あ…。オハヨ。」

着替えているものの、髪はボサボサだ。寝起きなのだろう。いや、よく見ると昨日の服装のままだ。

「オハヨって、寝起きかいっ!」

「レポート書いてたら夜中になってて…。準備するから待ってて。」

「あ。じゃあ、ミスドにいるね。」

「了解。」

これもいつものこと。学が寝起きの時は、ミスドでモーニング、というのがお決まりなので、一足先に最寄りのミスドに向かう。着替えているところを、ワンルームマンションの玄関で待つのは、さすがに気がひけるし、ドアの外で待つのもなんとなく好きじゃないので一足先に行くことにしているのだ。おかげで、店員には、すっかり顔を覚えられてしまっている。

「おはようございます。」

ミスドのドアを開けると顔なじみの店員が声をかける。顔なじみだけに“いらっしゃいませ”ではなく、“おはようございます”なのだ。


「ごゆっくりどうぞ。」

オーダーしたものを乗せたトレイを受け取ると、席に座る。

「もう来るかな。」

服装や髪型が決まらないと遅くなることもあるが、たいてい、瑠奈が座ってからしばらくすると学が到着することが多い。スマホでブログを更新したりゲームをしているうちに学はやってくる。今日は朝シャワーもあるだろうから、遅いかもしれないと、予測する。


瑠奈と学は、学部こそ違うが同じ大学に通う友達で、通学から休日から、何かと一緒にいる仲なので瑠奈の家族にも知られている。今日もお互いに学校もバイトもないので、こうして会うことにしたのだ。


「今日は何して過ごそうかな。」

瑠奈は、スマホで気になっていることを検索してみる。

「ここで遅い朝食だから、ランチはどっちでも良さそう。」

はてさて。買い物優先か。軽食片手に映画も捨てがたい。お互いに観たい映画が一致したら、映画も悪くない。

「決めた!」

気になっている映画があるので、映画を提案することに決めたのだ。

少しだけ温度の下がったコーヒーをゴクリと飲む。瑠奈は熱いまま、恐る恐る飲むよりも、このタイミングでグイッと飲む方が好きなのだ。

「お待たせ。」

ゴクリと飲んでホッとしたところに、学はやってきた。席に座っている瑠奈に声をかけると、オーダーをして、トレイを持って瑠奈の向かいの席に座るなり、話しかける。

「どう?何か良さそうなのあった?」

「映画はどう?観たいのがあるの。」

「いいね~。」

スマホの画面を見せると、学がドーナツを頬張りながらのぞき込む。

学は、たいていの場合、このように“いいね~”と言う。比較的、受け皿が広いので、相手の提案を喜ぶタイプなのだ。

「面白そうだな。行こう。」

瑠奈は時々こんな時、ふと思う。学に彼女ができたら、その時点で、こういう関係はおしまいだろう、と。

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