表裏

勝利だギューちゃん

第1話

「元気?」

「君は、誰?」

「私は君のそばにいる。いつも一緒」

「どこにいるの?」

「わたしは君、君は私。決して離れる事のない、それが運命」

声の主を、探してみた。


上、下、右、左、前、どこを探しても見当たらない。


「肝心なところを、探し忘れてない?」

「どこ?」

「後よ、後・・・」

見ると、背中に女の子が張り付いていた。


「やあ、やっと会えたね」

「いつから、そこにいるの?」

驚きより先に、疑問が頭をよぎる。


「君が生まれた時からよ」

「僕が」

「ええ」

僕は、ある存在が頭に浮かび、それを彼女に訪ねた。


「もしかして、君は背後霊?」

「それとは、ちょっと違うんだ」

「違う?」

疑問がますます広がる。


「私と君とは、何もかもが正反対の世界にいる」

「正反対の世界?」

「私と君とは、全てが違う。性別も趣味も、そして・・・」

「そして・・・」

「相手に対する想いも・・・」

「想い?」

僕は、ますます不思議になる。


「私は君が好きだった。でも、君は私に興味がなかった」

「でも、君の事は、今日初めて知った・・・」

「磁石は、SとNで出来ている。それは、知ってるね」

「うん」

「私が、Sなら君はN。だから、互いが互いを引き寄せた」

「なら、僕はどうすればいい」

少しの間が空き、彼女は続ける。


「君は君の世界を生きればいい。私は私の世界を生きる」

「どうやって?」

「パラレルワールドって知ってるね」

「ああ」

「その世界は、平行世界。でも、たまに交わる日がある。」

「それが・・・」

「そう、それが今日・・・」

信じられない不思議な出来事に、僕は言葉が出てこない。


「私は、そろそろ消える。そして元の世界に戻る」

「また会えるの?」

「それは、パラレルワールド次第・・・ただ、言える事は・・・」

「言える事は?」

「消えても、いなくなるわけではない・・・君のそばにいる・・・」

彼女の言うことが、全く理解できないでいた。


「今は理解できなくてもいい。いずれわかる」

「そのいずれはいつ?」

「ひとつだけ、ヒントをあげる」

「ヒント?」

「幸せの青い鳥・・・」


それ以来、彼女とはあっていない。

何者なのかは、わからない・・・


ただ「幸せの青い鳥」・・・

その意味だけは理解できた。


呼んでみようか・・・今も背中にいるであろう彼女を・・・

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表裏 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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