とい宅二次創作

十位

Bonjour、なんて。(※とがにん)

「おはようございます。」

 かかった声に、顔を上げる。

「……おはよう?」

 思わず疑問形になった。なんで起きているんだ、と思ってしまったからかもしれない。

 その疑問のままに滑らせた視線で捉えた時計の針を見れば、なるほど、おかしいのはむしろおれの方だったわけだが。


「今日は、」

 早いのですね。そう、変わらない表情で、それでも少しだけ不思議そうに、極僅かに首を傾げた目の前の男が言ったのは、十中八九起床時間の話だろう。

 毎日決まった時間に寝て起きるこの男と違って、おれは寝るのも起きるのも気分次第で。更に言うなら、おれが先に寝ることも起きることも、無いに等しいから、珍しいものを見たような気分なのだろう。

 ――しかしそれは、だった。


 暇つぶし程度にと手に取った本が、それなりによかった。この場合は悪かったとも言えるだろうか。

「流石に、おまえが起きてくるまで起きている気はなかったんだが。」

 ぽつとつぶやいたそれに、洗面所へ歩を進めかけていたジェルヴェが見たこともない顔で振り返ったのを見て、こちらも固まる。

「……起きて、…?…眠らなかったということ、ですか。」

 当惑した声を聞くのはあのとき以来だろうか。というか、それより。おれが自白しはいたときだって、そんな顔はしなかったくせに。

 思わずまじまじと観察してしまったおれに、ジェルヴェが、すがるような、叱るような、なんとも言えない声で名前を呼ぶまで、ほんの少し。



 これは、ありふれた朝の話。


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