振り返ればあの時ヤれたかも
バターライス高岡
第1話 榎本一身の憂鬱
俺が警官になりたかった理由?
浮わついた『リア充』が発する傍迷惑な、少女漫画でよく多用されるあのふわふわエフェクトのような、空気を、堂々と取り締まる事が出来るからだ。
昔はそんな場面に出会っても『爆発しろ』と念じる事しかできなかった。
だが今は違う。
毎日欠かさないパトロールで昔の俺と同じ気持ちを抱く独り身は、心を乱す独身たちは救われているに違いない。
そしてそんな俺の活動は今日、12月24日こそが山場であり、本番を迎えようとしていた。
聖なる夜と性なる夜を履き違えた挙げ句、公共の場でイチャつく未成年は全て取り締まってやる。
出動だ、俺。
出動だ、
クリスマスイブこそ、俺の戦場だ。
明石家さんまも赤い服のサンタも働いてる。
「精が出るな、榎本」
ポンと肩に手を置き、俺の顔を覗き込む。
「部長、クリスマスは外でイチャついても良いと言う法律はありませんよね?」
なるべく真剣な顔で俺は語る。
「だがな、イチャついてはいけないという法律もない」
それならイチャついたら厳罰に処しませんか?と話し出すことを察知されてしまった。
「流石、生涯現役、現場の男は先回りが上手い事」
上手いことを言ったつもりだったが、部長は鼻息をフッと鳴らすに止めた。
「まぁ、余りにも度を越した場合は声をかけてもいいが……まぁやり過ぎるなよ。クリスマスなんだから」
なんだからなんだ。
「我が本分の為、命令を無視致します。では」
後ろからため息が聞こえたが、聞こえないフリをした。
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