【アニメ】『神様になった日』最終回目前だけどその前にちょっと物申したい

2020年12月24日





 10月より放送開始しましたテレビアニメ『神様になった日』ですが、先日第11話を放送し、いよいよもってクライマックス感が出てきました。……ということにしておきましょう。


『神様になった日』は原作脚本に麻枝准を起用したオリジナルアニメーション。麻枝氏といえばゲームブランド「key」に所属しているシナリオライターで、代表作に『AIR』『CLANNAD』『リトルバスターズ!』などがあり、またこれらの作品はテレビアニメ化もされ大ヒットしました。


 また2010年からはオリジナルアニメの原作脚本を行うようになり、第一弾となる『Angel Beats!』、続く2015年には『Charlotte』が放送され、両作品賛否両論はありつつも話題性を呼んだ作品になりました。


 ……で今回、2020年に放送が始まった3本目が『神様になった日』になるわけですが、これがまた……手放しに称賛することができないほどアレな内容なのです。『Angel Beats!』や『Charlotte』はまだ賛否両論だったのですが、『神様になった日』に関しては……自分が把握しているかぎりでは賛否のバランスが極端な感じもします。



 という前置きのもと、今回はいち視聴者として感じた『神様になった日』という作品についてです。







 本題の前に作品情報。


・公式ページ

https://kamisama-day.jp/



・あらすじ(公式ページより抜粋)


 彼女が神様になった日、世界は終焉へと動き出した――

 高校最後の夏休み、大学受験を控えた日々を送る成神 陽太の目の前に、ある日突然「全知の神」を自称する少女・ひなが現れる。「30日後にこの世界は終わる」そう告げるひなに困惑する陽太だったが、神のような予知能力を目の当たりにし、その力が本物だと確信する。超常的な力とは裏腹に天真爛漫であどけないひなは、なぜか陽太の家に居候することが決まり、2人は共同生活を送ることになる。「世界の終わり」に向けて、騒がしいひと夏が始まる。



・ニコニコチャンネル

https://ch.nicovideo.jp/kamisama-day



・ニコニコ動画 第一話 

 神様になった日 #01「降臨の日」

https://www.nicovideo.jp/watch/so37633933













 アニメ放送前から「泣きの原点」というキャッチコピーを見かけることが多かったこの作品。確かに麻枝氏によるシナリオのゲームには感動的な結末を迎えるものが多い印象です。それはオリジナルテレビアニメでも同様で、賛否両論はあれど『Angel Beats!』や『Charlotte』も感動を一つの目標にしたストーリーとなっております。


 そうした流れからの「泣きの原点」とのことですので、『Angel Beats!』や『Charlotte』での反省を踏まえて、余計なことをしないでストレートに作品に向き合ったのだろう、と個人的に感じまして一定の期待を寄せていました。ええ、放送するまでは。


 10月から放送が始まり2話くらいまでは「SF(すこしふしぎ)な青春もの」という印象でした。詳細はあらすじや、実際に視聴していただいた方がよろしいかと思いますが、序盤の頃は「タイムトラベルものか? それともパラレルワールドものか?」といった考察が捗り、またそういった考察での盛り上がりが所々で見受けられたものです。


 しかし3話か4話あたりから雲行きが怪しくなってきました。とくに4話に関しては、個人的には近年稀に見る最低な回でした。ただこの4話については逆にコメディ回として吹っ切れているという意見もあって、それこそ賛否両論だったのではと思います。


 4話放送当時は「まあ1クールあるし一話くらいネタ回やってもいいんじゃない」といった具合で寛容だったのですが、結果としてそれ以降、中盤を過ぎるまで本筋のストーリーが一切進展していないのです。ただただ登場人物たちの日常をコミカル(ただしすべっていて全然面白くない)に垂れ流しているだけの放送。


 そして中盤を過ぎたあたりで、ついにヒロインであるひなについてその正体が明かされるのですが、まあ端的に申し上げれば、よくあるヒロイン死んじゃう系のお話だった、という冷めた感想しか出てきません。悪く言ってしまえばオリジナリティがありません。


 SF的にも伏線回収といいますか種明かしがされるのですけど、それに関しても設定がSF作品『know』と瓜二つ。『know』は作家野崎まどによるSF小説で、野崎氏初の本格SFとして高く評価され躍進の一作となった作品です。この『know』があったからこそ劇場アニメ『HELLO WORLD』が制作されたとも言われ、SF作家として名を馳せるようになりました。


 もちろん話の内容は全然違うのですが、根幹的なSF設定はネタ被りしています。というか序盤の考察に関しても「野崎まどの『HELLO WORLD』か?」と一部で言われていて(自分もそう予想していました)、実際中盤で蓋を開けてみると「野崎まどの『know』の方だったか……」と感じたものです。


『HELLO WORLD』という有名な作品が先にあったためその二番煎じ感があったのですが、実は『know』という傑作の二番煎じだったということ。そしてストーリーの基本となる部分が所謂ヒロイン死んじゃう系のお涙ちょうだいなわけですから、長く物語という媒体を楽しんでいる身としては新鮮さが皆無でしたね。







 とはいえ、別に二番煎じであろうか三番煎じであろうが、面白ければそれでいいと思います。というか今の時代これだけコンテンツが誕生しているのですから、ネタ被りコンセプト被りなんてものは当たり前に発生しています。今更「ネタ被りだ!」「パクリだ!」だなんて騒ぎ立てるほどではありません。


 それに『Angel Beats!』や『Charlotte』も死後の世界や超能力といったありふれたネタを一つの題材にしていて、それでもしっかり独立とした料理法をとっているので面白さはあります。『Angel Beats!』や『Charlotte』は物語の畳み方がアレなだけだと記憶しております。


 というかそもそもの話をすると、作品についての面白さなどは所詮受け手側の個人的な好みでしかないのです。「面白い」「つまらない」というのは、あくまでその人がみて気に入ったから「面白い」のであり、逆に気に入らなかったから「つまらない」でしかなく、そういった主観的な感想がそのまま作品の価値を決めるものではないと、個人的に考えております。


 それは今回の『神様になった日』でも同様で、『神様になった日』を視聴して気に入った方にとっては「面白い」ですし、気に入らなかった方にとっては「つまらない」、ただそれだけになります。こうして愚痴のように作品を批評している私だって、あくまで個人的に気に入った気に入らなかったということをそのまま記事にしているだけであり、言うなれば便所の落書き、ネット掲示板の匿名書き込み、といった程度のことと同レベルです。







 それを踏まえて、私個人が主観的な意見として『神様になった日』が「つまらない」と感じた点は、主に「話が薄い」ということ。そしてこの「話が薄い」と感じた要因は大まかに二点あります。




 まず一つは、ストーリー構成に疑問を抱いたこと。このことについては既に語りましたが、この『神様になった日』という作品は中盤までほぼほぼ本筋のストーリーに進展が見受けられないのです。


 個人的にラーメン回とか麻雀回とか、あと夏祭り回とか、一話まるまる使って描く必要があったのだろうか疑問です。また近頃だと、最新話の介護パートも、このクライマックスの山場となるこの場面でわざわざ一話使って描写する必要のあるエピソードだったのか謎です。もしかしたら最終回で介護パートを活かした伏線回収をするのかもしれませんけど、ラーメン回と麻雀回の伏線の回収が実にしょうもないものでしたので、そんなに期待できませんね。


 全体的にみると、まるで二時間の劇場アニメを頑張って1クールのテレビシリーズに引き延ばした、みたいな印象を抱くほど個々のエピソードが薄くなってしまっているのです。このあたりはたとえば、劇場アニメ『君の名は。』において主人公二人の入れ替わりをダイジェストで流すシーンがありますが、この入れ替わりの連続をダイジェストではなく一つひとつ丁寧に描写して劇場作品ではなく1クールのアニメにしてみました、みたいな冗長さといえば伝わるかもしれません。


 無駄なシーン(と思われる)が多い故に、物語のテンポ感が悪くなってしまっている印象です。このあたりテンポよく流れていけば、たとえば登場人物たちのコミカルなギャグシーンでも素直に笑えてしまいますが、テンポが悪いと「この人たち何やってんだろう?」という冷静な気持ちになり、下手すると登場人物たちが奇人変人に見えてしまい感情移入を阻害する結果になりやすいかと個人的に思います。


 こういったテンポの悪いストーリー構成が、『神様になった日』のよくない点の一つだと感じています。







 もう一点は、コンセプトがぶれている、さらにいえばコンセプトがわかりにくいところです。


 個人的に物語のコンセプトはシンプルである方がいいと考えています。なんならコンセプトは一言で言い表せられるくらいシンプルであってもいいと思います。


 近年の作品でたとえると、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの話題作『鬼滅の刃』であれば、過酷な状況下において鬼殺隊と鬼との死闘を描く作品ですが、序盤から提示されているコンセプトはあくまで「鬼になった妹を助けたい」というものであり、本編中で様々なエピソードが語られますがこのコンセプトだけはぶれることなく作品のベースとなっています。さらにこのコンセプトは「家族愛」の一言でまとめることも可能です。


 さらに同じ今期で放送しているアニメ作品であれば、『呪術廻戦』なら強力な呪霊との熾烈な戦いを描いていて、主人公も特殊な呪物に耐性がありまとめて取り込んで主人公ごと始末したいといった思惑もありますが、しかしながら主人公の行動原理は「呪いから人を助けたい」といったシンプルなもの。この主人公の行動原理がそのまま作品のコンセプトにもなっているかと思います。


 その他『魔女の旅々』は言ってしまえば「魔女が行く先々の出来事」を描いているだけですし、『安達としまむら』とかは「相手にとっての特別でありたい」というものがあり、両作品もこの根幹的なコンセプトがぶれることなくエピソードを重ねています。


 こうしたシンプルなコンセプトがあると、いち受け手側としてとてもわかりやすく作品を捉えることができるのです。とくにこういったコンセプトを第一話で提示してくれると、視聴者としてもどこを楽しめばいいのか把握しやすいかと思います。小説の創作論において冒頭の面白さが大事とよくいわれますけど、よくわからない小説を長々と読む気にもならないことから、こういったシンプルでわかりやすいコンセプトをできるだけ早く提示するのが一つのテクニックとなるわけです。


 そういった観点から『神様になった日』を振り返ってみると、確かに第一話からわかりやすいコンセプトを提示してはいますが、回を重ねるにつれてそのコンセプトから離れていってしまっているのです。それがつまり先程から何度も語っている「中盤まで話が進展しない」に繋がるものでもあるかと。


 ヒロインに何か秘密があるんだろうなーと匂わせるだけ匂わせて、実際にやっていることはただただ青春劇を流しているだけ。途中SF的な展開を挟みつつ、後半ではなんとか感動ものに方向転換しようとしている様は、正直この作品が何をやりたいのかがよくわからなくなっています。コンセプトにまつわる伏線を回収しても、その真相があまりにも肩透かしだったのも残念でしたね。


 今期の他の作品もそうだし過去の名作でもそうですけど、割と序盤で提示されたコンセプトとラストでのコンセプトがぶれていないものがほとんどかと認識しています。途中どんでん返しとかのビックリポイントがあってひっくり返ることもありますけど、でも作品の目的、それこそコンセプトごとひっくり返ることなんてそうそうないです。


 正直今『神様になった日』のコンセプトは何かを聞かれたら、自分答えられないです。


 ただこの『神様になった日』は「泣きの原点」と銘打っていますけど、でもこの「泣き」って言わば一つのジャンルでしかないかと。ミステリーとかファンタジーみたいな大きなジャンルとはいかないまでもサブジャンルとして泣きの要素があるのだと思います。ジャンルとして泣かせたいのはよくわかります。ただ主人公たちがコンセプトに沿って動いているわけではなく、むしろ主人公たちは受け身として物語に動かされている感覚があるので、共感性に乏しく見応えが薄まってしまっているのではと私は感じています。泣きというジャンルにおいてどう泣かせるのかがつまりコンセプトではないのか。


 5W1Hをしっかりしろ、とまでは言いませんけど、登場人物たちがなにをもって行動しているのかをはっきりさせるだけでも、作品が目指すポイント見せたいポイントが捉えやすく、視聴していて「気になる!」という興味に繋がるかと思います。


 こういったコンセプトのぶれが、『神様になった日』にはあるのだと感じます。








 もうすぐ最終回を迎えるわけですけど、本音を言えば最終回に微塵も期待していません。精々「どう終わらせるのか」という点、悪くいうと「どう落とし前つけるのか」が気になるから視聴を続けているだけ。





 結論。というかまとめ。



 劇 場 ア ニ メ の 尺 で あ れ ば ま だ 納 得 で き た 。



 です。






 長々と愚痴のような批評擬きを書き綴りましたけど、ひとまず、麻枝氏の次回作に期待()したいですね。







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