【アニメ】『ダーウィンズゲーム』から考える上手な俺たたエンドとは?
2020年3月22日
金曜日の深夜に放送していましたテレビアニメ『ダーウィンズゲーム』ですが、先日最終回を迎えました。いやー思ったより面白かったです。
まずはテレビアニメ『ダーウィンズゲーム』の基本情報。
FLIPFLOPsによる日本の漫画作品。『別冊少年チャンピオン』(秋田書店)にて、2013年1月号から連載中。(Wikipedia参照)
アニメ公式ページ
https://darwins-game.com/
アニメあらすじ
平凡な日常を送っていた男子高校生のカナメの元に、ある日アプリ「ダーウィンズゲーム」の招待メールが届く。何気なくアプリを開いた事でゲームのプレイヤーになってしまったスドウカナメ。怪しげな雰囲気のゲームを訝しんでいるうちにバトルが始まり、突如パンダの着ぐるみを着た謎の人物が襲い掛かかる。果たして、絶体絶命のバトルにカナメは生き残ることができるのか!?
最終回を放送した翌日、土曜日の昼間に録画していたものを視聴しまして、その後自分のツイッターの方で感想を呟きました。
『ダーウィンズゲーム』の感想(Twitter)
https://twitter.com/yuki_sugiura_/status/1241250220622508037
以下、ツイッターに投稿した感想の転載です。
一見B級アニメかと思いきや、しっかり面白くて素晴らしい。加えて、女の子たちがカワイイ(JK、JC、JS揃っていて、しかもcv上田麗奈とcv花守ゆみりなところもポイント)。
あと連載中の漫画原作でアニメも所謂俺たたエンドではあるものの、一つの区切りをつけて次の目的を提示した点において、筋の通ったまとまりのあるカタルシスで好感が持てる。全体的に、異能力中二デスゲームという痛々しさではあっても、その素材を巧みに融和して昇華しており、紛れもない良作だった。
あえて惜しかった点をあげるとすれば、序盤がやや弱く期待感が得られなかったところでしょうか。「あーこういう感じか……」的な。後半から面白さが跳ね上がりましたが(とくに戦闘シーンの緊張感が化けた)、ここで上がらなかったら本当にB級で終わってしまっていたかもしれない。正直二期みたいです。
さて、テレビアニメ『ダーウィンズゲーム』は、連載中の漫画作品が原作であることもあり、アニメでは所謂俺たたエンド(「俺たちの戦いはこれからだ!」エンド)となっています。正直、個人的にはこの「俺たたエンド」というものは扱いが難しく、うまくいけばそれでいいのですが下手すると最悪なオチとなってしまう傾向があると認識していまして、賛否両論になりやすいものだと思います。
しかしながら今回の『ダーウィンズゲーム』に関しては、たとえ俺たたエンドであったとしてもそこまで悪い印象にはならず、むしろ1クールのテレビアニメとしてとてもいい落としどころだったのでは、と思ったくらいです。そして過去のテレビアニメ作品においても、俺たたエンドの名作は数多くあります。
一方で、やっぱり納得がいかない俺たたエンドの作品もありまして、では「いい俺たたエンド」と「悪い俺たたエンド」とでは何がどう違うのか? と疑問に思いまして、しばらく「俺たたエンドとは何か?」について考えていました。
『ダーウィンズゲーム』と近いアニメ作品として、2012年にテレビ放送された『BTOOOM!』を例に出したいと思います。『BTOOOM!』も同様に連載中の漫画原作(アニメ放送当時)であり、同じく巻き込まれ系のデスゲーム作品でして、テレビアニメとしても俺たたエンドというオチになっています。
ただアニメ『BTOOOM!』に関しては、どちらかといえば納得のいく終わり方ではなく、つまり「悪い俺たたエンド」という感想を抱いた記憶があります。
この『BTOOOM!』と『ダーウィンズゲーム』を比べると、物語としての明確な違い(もちろん別作品のため設定やストーリーに違いがあるのは当然として)とは、物語における「目的」の扱い方にあるのではないかと思い至りました。そしてこの扱い方こそが「いい俺たたエンド」と「悪い俺たたエンド」の違いなのではと考えました。
『BTOOOM!』と『ダーウィンズゲーム』の最大の違いは、デスゲームの仕様にあります。どちらも主人公は巻き込まれてゲームに参加することとなりますが、『BTOOOM!』に関してはサバイバルゲームであり、一方『ダーウィンズゲーム』は基本一対一、もしくはクラン同士によるチームバトルであり、見方によってはロールプレイング的な戦略ゲームでもあるのです。
で、サバイバルゲームであるならば、ゲームの目的はすなわち「生き残ること」となります。ですが『ダーウィンズゲーム』のようなゲームですと様々なバトルにおいて「どちらが勝つか」という細々した目的の集合体となると思います。他プレイヤーと遭遇することでのバトルや、イベントやクエストが発生して参加するなど、個々のゲームクリア条件はあってもゲームそのものの目的はないのです。つまり似たようなデスゲームですけど、そのゲームの最終的な着地点がまったく異なるのです。
『BTOOOM!』はサバイバルゲームで生き残ることが目的。『ダーウィンズゲーム』は目立った目的はない。といった具合。もちろん両作品も主人公は「ゲームをやめたい」という懇願的な目的はあるものの、あくまで序盤のリアクションとしての目的に過ぎないかと。そしてその「ゲームをやめたい」という願いとゲームの目的が一致しているのが『BTOOOM!』です。ゲームをやめたければサバイバルを生き残ればいいのですから。一方『ダーウィンズゲーム』はゲームそのものに大きな目的がない(明かされてない)ので、どうすることもできないのです。
つまりは、『BTOOOM!』はサバイバルゲームである特性上、序盤で物語の「目的」が提示されているのです。そしてその「目的」を達成するときはすなわち原作である漫画作品が完結するときであって、原作の途中までしかアニメ化しないアニメ作品では物語の「目的」に到達することが不可能になってしまうのです。よって、たとえテレビシリーズの作品として一区切りをつけたとしても、序盤で提示された「目的」とオチで達成された「目的」に齟齬が発生してしまうため、テレビシリーズアニメとして一本の作品として捉えたときに消化不良に陥ってしまうのだと思います。
一方『ダーウィンズゲーム』では、序盤で物語の「目的」が明かされていません。よってどのようなオチになろうとも序盤で提示された「目的」と齟齬が発生することはないのです。むしろ『ダーウィンズゲーム』においては、仲間と一緒に戦う過程で友人が犠牲になっていく中で明確な目的を見つける、言わば「『目的』に至るのが目的」というお話になっており、実際テレビシリーズのアニメとしても目的を新たにして挑む、という前向きな俺たたエンドとなっているわけです。構成上仕方なく俺たたエンドにしているわけではなさそうです。
つまりこの部分、「前向きな俺たたエンド」になっているかどうか、がすなわち「いい俺たたエンド」ではないでしょうか。そしてその「前向きな俺たたエンド」に至るための手段の一つが、物語の「目的」を序盤で提示せずオチで後出しする、もしくは序盤で提示した「目的」を全体のお話と絡めたうえで最後のオチで強調する、といったものではないでしょうか。
この方法であれば、たとえ作品全体として途中であっても、一区切りとしてのオチを設定することができるため、一定のカタルシス(本来なら「読後感」と言いたいのですが、映像作品で読む媒体ではないため「カタルシス」で代用。広義的な意味としての達成感)が得られ、原作が完結していなくてもある程度のオチをつけることができるのではないでしょうか。
もちろんこういったものは原作のストーリー構成に左右されるものだとは承知しています。原作側の視点からすると、最初は「目的」を曖昧にして、途中で明確な「目的」を提示し、完結に向けてその「目的」を達成する、といった二部制の物語である必要があるかと。そしてこういった区切りがある原作がすなわちメディアミックスしやすい作品ではないかと思います。
物語としては、受け手側からすると序盤で作品の「目的」を明かしてくれた方が楽しみ方の理解が早くて非常に助かりますし、創作論においても「何をする作品なのか明確に」といった具合で5W1Hを意識するよう解説しているものもたまに見かけますが、しかしながら特殊な例外としてあえて序盤を曖昧にするという手法もありなのでは、と思うようになりましたね。ただこの場合、物語の序盤での掴みが弱くなってしまうので、ストーリー構成としては難しいものがあるかと。事実アニメ『ダーウィンズゲーム』の序盤はB級作品感があってそこまで面白いものでもなかったですしね。
なにはともあれ、「目的」の扱い方次第で俺たたエンドが有効になる、ということを、テレビアニメ『ダーウィンズゲーム』を視聴して思いました。
……これ、WEB小説とか連載漫画とかでも、オチが思いつかない場合は「『目的』に至るのが目的」というかたちで終わらせれば、見方によっては名作で終わらせられるかもしれませんね。まあ、冷静にみればただの打ち切りエンドでしかないんですけどね。オチが思いつかない作者さんは参考にしてみてはいかがでしょうか。推奨はしませんけど。
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