記憶遺産ジェンダー

3月4日


「それは返信したほうがいいと思う」

 ○○と平然とメールをする私に呆れただろうか。


「お前は馬鹿じゃないと思うよ。自分が思ってるよりも小さい人間じゃないよ」


「うざい質問になるけど、いい?」

「何?」

「どうしてうちなんかと仲良くしてくれるの?」

「うざいってほどじゃないけど、うわー、私のこと好き?って聞いてるみたい」

「あはは」

「勉強になるから、かな」


「逆に聞くけどさぁ、どうしてお前はうちと仲良くしてるの?」

 私は少し考えた。

「いや……ソウルメイトだからじゃね?」

「お前今すごく恥ずかしいこと言ったなwww」

「wwwもう嫌だwww」

 でもどうして付き合ってるのだろう? どうしてって聞かれるとわからない。

 やっぱり私は考えが足りない。


「今二番目に憎いものは何とか(物質)と脂肪」

「二番目、か」

「うん」

 一番目はなんだろう。


「うちってレズかもしれない」

「…………はい?」

「なんか……したいって思わない。男とするくらいなら女のほうがましかも、とか思っちゃう」

「全然したくないの?」

「うん。乗られるのとか嫌だ」

「お前が乗ればいいじゃん」

「そういう問題じゃねーよ。それで○○とか○○とか目で追ってみたけど、かわいいなぁって思うだけで全然そういうのは思わなかった」

「ジェンダーが合ってないんじゃないん?」

「ジェンダー?」

「うん。知らない?」

「うん」

「社会的な性別のこと」

「ふうん……ああ、そうかもしれない」

「ホモの人と結婚すれば?」

「そう。そうしたいんだよ」

「でもそこまでにたどり着くのが大変そうだよな。初対面で「あなたはジェンダーずれてますか?」なんてきくわけにもいかないし」

「だなー」


「うちお前と結婚したかった」

「うちもー」


「どっちかが男だったら即結婚してのんびり暮らすのにな」

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