第13話

第13話

雨だ。


目が覚めるとすぐに、窓の外を見た。


藤堂が立っている。はじめの頃、二人の刑事たちは代わる代わる捜査本部に戻り、そこで仮眠をとっていたらしい。が、最近では父が離れの小屋をつかっていいと許したらしく、そこで寝泊りしている。そのお陰で、大分体が楽になったと言っていた。


もやがかかったような霧雨の中、雨宿りなのか、桂の木の幹にもたれて外を眺めている。


退屈そうだな、と自分のために申し訳ない気持ちと、見られていることに気づいていない、無防備な姿が微笑ましいという気持ちが同時に湧いた。


部屋をノックする音。「朝ですよ」と声をかけながらエイが入ってきた。


「あらあら、また潜り込んだのですね、透子様」


 呆れながら明を起こしにかかる。明はうーんと呻きながら、のろのろと上体を起こした。「雨か。……道理でだるい」

「ご機嫌斜めですね。夜更かしですか?」

「そうでもない。でも体重い。学校行きたくない」

「はいはい、朝食の準備が整ってございます」

「もう、エイ。僕だるいんだってば」


 ぷぅっと頬をふくらませた明に、エイは「あら、可愛いお顔」と適当な返事で相手にせず、掛布団を剥いだ。


 珍しい、明がこんな駄々をこねるだなんて。大丈夫? と声を掛けるとエイが、「大丈夫ですよ。いつものことです」と言ってから、


「あら? 透子様がいない時はいつも愚図愚図言っているんですけど……今朝はいらっしゃるのにお珍しい」


 と、首を捻った。


「え? そうなの?」


 透子と一緒に起きる朝は、一度もそんなところを見たことがないのに。


 明は億劫そうに頭を掻きながらベッドから降りる。透子は慌てて一緒にドアに向かう。部屋から出る寸前、窓の外をちらりと見た。


「――誰か探してるの?」


 明に問われ、咄嗟に「ううん」と否定する。


 見えている間に、もう少し姿を見ておきたかった、とは言えなかった。

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