第36話 case6 決着編
「う゛え゛え゛え゛えーーーーーん。ごあ゛がっだよーーーーー」
「なんだ、生きてるじゃねーか」
河童速力で、あっという間に研究所へたどり着いた倫太郎を待っていたのは、滂沱の涙を流しつつ、腰を抜かした、五体満足ピンピンしている鈴子と。
「にゃーん」
その頭の上で、呆れた声を出す姫、そして。
「あぁ! あぁ! 消えてしもうた! 消えてしもうた!」
と、黒焦げとなった庭先で何かを探す博士だった。
倫太郎は、ひっく、ひっくとまだ愚図る鈴子を片手間にあやしつつ、唯一この中で瘴気を保っている姫から何があったのかを聞き出す事にした。ちなみに博士は最初から正気ではないので、計算外だ。
倫太郎と姫は、探し物に熱中している博士から、わずかに声を取った後、声を潜めて会話を始める。
「おい、結局何があったんだ」
「みゃー、少し前の話だにゃー」
そういい、姫は回想を始める……
……ヴーヴーと、博士のスマートフォンからアラームが鳴る、それと同時にスマートフォンのディスプレイに表示された、兵士のマスコットが侵入者の情報を表示する。
ついこの間までは、VHS式の監視カメラが現役だったと言うのに、ちょっと興味が向けばこの
「なんじゃ、誰ぞ来た様じゃが、押し込み強盗かの?」
博士はそう言い近くのモニターに監視カメラの画像を流す、そこに映っていたのは、5体のミ=ゴであった。
「あれは!」
鈴子は先程の悪寒の正体を知る、ミ=ゴの目的は最初から此処だったのだ。その為に邪魔となる倫太郎を遠ざける目的で、あんな茶番を用意したのだろう。
こちらに来るミ=ゴたちは、手に拳銃らしきものを手にしていた。だが違いはそれだけではない、鈴子の目には全員の輪郭が何だかぼやけて見える、もしかするとバリアーの一種なのかもしれなかった。
「博士! アレヤバイです! 敵です!」
「なっなんじゃ突然大声出しおって」
鈴子は焦りに任せて、博士を急かすも、当の博士は事態を飲み込めてはいなかった。それもそうだろう、モニターに映るミ=ゴたちの姿は、地球上の生物からあまりにも遠く離れすぎていて、現実感と言うのが湧き辛いほどの異形だったからだ。
「はっ博士、兎に角ここは危険です! 早く逃げなきゃ!」
鈴子がそう言い、博士を立たせようとするが、同時に、大きなアラームが室内に鳴り響いた。
「WANING、WARNING、ヘイ、マム! 現在玄関にあわてん坊のお客さんがご到着だ! 危険度レベル5! 危険度レベル5!」
「ほう、レベル5とはなかなかやるのう、あー因みに玄関にトラックが突っ込んできたのをレベル1に設定しておるぞい」
「そんな解説、今はどうでもいいですって! 兎に角逃げなきゃ!」
「いったい何を焦っておると言うのじゃ。逃げるも何も、儂の知る限りここ以上に安全な場所は無いぞい。
よし、憲兵君、これが初陣じゃ、データ収集がてら適当に歓迎してやってくれ」
博士が、その命令を下した直後だった。
玄関先は地獄と化した……
「……酷かったにゃ、この世の地獄とは正にこのこと。四肢はもがれ、腹は割け、しかもあの博士とやらが、
姫はぶるりと体を震わせた後、もう思い出したくもないとばかりに、黙り込んだ。もしかすると、自分の正体が博士に知れてしまった後の事を想像してしまったのかもしれなかった。
ぐずる鈴子、
「なんじゃこりゃーーーー!!」
事務所に戻った倫太郎たちを待ち受けていたのは、氷漬けとなった一室だった。
「あんの、くそ海老がぁあああーーーー!!!」
廊下もドアも、ドアの隙間から覗く室内も、一面全て純白の世界。ここは南極、はたまた北極かと言った所だ。
その極寒の世界で、さらに倫太郎の背筋を凍らす声が聞こえて来た。
「おい倫太郎」
「ひっ! おっオーナー! こっこれはですね」
そこに立っていたのは、絶対零度を下回る、極寒の視線を向けてくる、このビルのオーナーであった。
「連絡を受けて来てみれば、この有様。
理由も経過も聞かん。
この修繕費は貴様持ちだからな」
クールな視線の奥底に、隠しきれない怒りの炎を秘めたオーナーはそう言って立ち去って行った。
その口撃はどんな攻撃よりも倫太郎の心を抉ったのだった。
後日、ミ=ゴから貰った
Case6 真(ちぇんじ)賢者の石を追え! 完
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