雪の日に

勝利だギューちゃん

第1話

雪が、降っていた・・・

まあこの地方だと、珍しくも何ともないのだが・・・


しんしんと降り積もる雪・・・

はくと出る白い息・・・


白・・・


この町は、白い物つくしだ・・・

町の花は、胡蝶蘭。

花言葉は「清純」。


誰がいつ、町の花を、胡蝶蘭に決めたのかはわからない。

でも、すでに定着しているので、クレームの声は、出てこない・・・


胡蝶蘭・・・

結婚式に、花嫁さんが投げるブーケに使わる花だ・・・


今日も町の協会では、結婚式が行われていた。

周りから祝福される、幸せいっぱいのふたり・・・

花嫁さんが、ブーケを投げる・・・


ひとりの女性が受け取った。

(ブーケを受け取った女性は、次にお嫁にいける)

その話は、少なくとも、この町では本当だ・・・


この町では、外から見れば、変わり者が多い。

みんなが変わり者なので、それが当たり前になり、

よそであるような、いじめや仲間外れと言った事は、全くない。


その雰囲気が、俺は好きだ・・・

ずっと住みたいと思う。

でも、それは叶わなかった・・・

明日、俺はこの町を立つ。


見慣れた町も、今日は特別に見える・・・


みんなに見送られるのは辛い。

なので、夜に夜行で旅立つ事にした・・・

自分の夢を叶えるために・・・


家族にだけ、挨拶をし、俺は駅はと向かった。

普段は誰もいない時間帯・・・


ホームに降りると、人影があった。

「なんだ、先に来てたのか・・・」

「うん・・・何だかいつまでもいるのが辛くって・・・」

「同じだな・・・」

「同じだね・・・」


列車がホームに入ってきた。

「さあ、行こうか・・・」

「行きましょう」

彼女の手には、ブーケが握らていた。


「そのブーケ、どうしたの?」

俺は彼女に訪ねた。

「この前の結婚式の時、花嫁さんからもらったの」

「どうして?」

「知ってるくせに・・・」


花嫁さんから、ブーケをもらった女性は、次にお嫁に行ける。

彼女の心にも、強く残っているようだ。


「向こうへ着いたら、早速式をあげましょう」

「そうだな・・・忙しくなりそうだ」

「お互い、休んでる暇はなさそうね」

顔を見つめ合い、笑みがこぼれる。


「この関係が、人生の終焉の時まで、続けばいい」

ふたりの想いは、一致だった。


俺の・・・いや、俺たちの夢を語るのは野暮だ・・・

だから、ここではしない。


ただ、ふたりなら乗り越えられる。

人生で、最大のパートナーを得たのだから・・・

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雪の日に 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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