夏の勲章
カゲトモ
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「わ、凄い」
ついそんな言葉が出た。だって休み明けにかどわき青果店に行ったら少し振りに顔を見たはずなのに、門脇くんが何トーンか黒くなっていたから。
「まだちょっと赤いくらいじゃない? 痛そう」
鼻の頭の皮が少しめくれた門脇君は真っ黒な顔で笑った。
「いやぁ、さすがにちょっと痛かったですね。調子に乗りました。スカイさんも少し焼けました?」
確かに俺も焼けたのは焼けたけど、ほんのうっすらって感じだし。この休みの間も外に出ることはあんまりなかったから。
「門脇君の方が何倍も凄いよ」
「へへ、やっぱりダメですね。ちゃんと日焼け止めとか塗らないと」
「分かる。でもつい面倒だし、男だしなってなるよね」
「なります」
うんうん、と二人して頷く。
日焼け止めは今や女性だけのものじゃないだろうけれど、ついつい気が引けてしまう。日光を浴び過ぎると皮膚病のリスクも上がるし、皮膚の免疫も落ちるとか何とかテレビで言っていた。ちょっと浴びるのは良いけど多量は良くないってことだよな。何でも適度が一番ってか。
「奈々子にはちゃんと塗ってあげたりするんですけどね」
「女の子だしね」
「そうなんです、あの歳でもう日焼けのことをどうこう言ったりして。嫁が言うからなんでしょうけれど」
「そうなの?」
門脇君は少し苦い顔をして頷く。
奈々子はまだ保育園児だ。それなのにもう? オゾン層とかそう言う関係で今と昔のUVの量が違うとかそう言う奴だろうか? まぁ確かに子供の肌にこの日差しは強すぎるかもしれない。
「それなら門脇君もついでに塗ればいいのに」
俺みたいに身の回りにそう言うのがない訳じゃないならできそうなもんだけど。
「いや、結局面倒で」
それは分かる。
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