第21話 brain mixer
目の前の橋を単眼鏡で索敵……
『ヤツら』は居ない様子……
そして、車両により道が塞がれていないことを確認する。
まぁ、あくまでも見える範囲だが……橋の反対側にまでは事故車が多く見通せない。
橋は1km強の行程……
時速40kmで2分程度で走り切れる……
あっという間……
……先程の二の舞はイヤだ……
しかし渡りきってしまえば、出会っても撒ける。
覚悟を決めて、橋を渡る。
K道8号線となる橋を進む。
元は赤く塗られていた錆の浮いた茶色の骨組みを見る。
所々塗装は剥げているが、破損やクラックは見当たらない。
道の左右はガードレールで囲われている。
事故車を迂回しながら走る。
パンクを起こさない様に、車両からの落下物を避ける……ネジやガラス片を踏んでは堪らない。
ほんの2分……が長い。
前方……10m程先……バスが反対車線がら飛び出して、斜めに停まっている。
バスの開けっぱなしの降車口から、『ヤツら』が1体転がりでる……文字通り転がる。
何故なら脚が腐り落ちて無いから……腕の力でズルズル前進……そしてゴロン……道路に落ちる。
来てほしくない時に限って……こんなものだよね……勘弁してほしい。
『ヤツら』はバスの床に這いつくばっていたのだろう……そりゃ、単眼鏡では見付けられない。
四つん這いの『ヤツら』だから排除は簡単かもしれない。
僕はバイクを降り、鉈を握る....匍匐前進の『ヤツら』を見据え……頭部破壊を目論む。
ズルズル芋虫の如く、近寄ってくる『ヤツら』を早々に始末して、一刻も早く橋を渡りきりたい。
僕は駆け足で近寄り、鉈を振りかぶる『ヤツら』と3m程度の距離……
突然、『ヤツら』が浮いた。
いや、腕で身体を浮かせた。
僕は急ブレーキ!
『ヤツら』が腕の力で、歯を剥いて僕の方に飛び掛かる……両腕で僕を掴もうと五指を開いている。
おいおい、そんな腕力有るなんて聞いてないぞ!
僕は飛び掛かって来た『ヤツら』の顔面に鉈を振り下ろす。
焦って、鉈の刃が『ヤツら』の方を向いていなかった……鉈の峰が『ヤツら』の額にぶち当たる。
「ゴキッ」鈍い音がして、『ヤツら』の頭蓋骨が割れた音……が勢い余り、鉈は顔の左側面を滑り、『ヤツら』の右耳を削ぎ落とす。
攻撃失敗……
こんなのは『ヤツら』にとっては蚊に刺された程度……意に介さず、僕に接近する事を止めない。
掴み掛かろうとする『ヤツら』に対して、もう一度今度は刃を返して振り下ろす。
「ザグッ!!!」深々と鉈が『ヤツら』の頭に埋まる……手応えあり!!!
右脳と左脳を分離する如く深々と鉈は食い込んだ……
グラリ……『ヤツら』が前に倒れる....
....中々いいダメージが入った様子....
僕はホッとする....
しかし、僕は甘かった。
頭に鉈を生やしながら『ヤツら』は両手で……僕の足を掴む。
頭を振りかぶり脛を齧るが、プロテクターに阻まれて、文字通り歯が立たない。
『ヤツら』は僕を自身に引き付け様とする……僕は更に焦る。
掴まれた足を振りほどく……一心不乱に……
……イヤ……
直後、選択が間違った事に気付く……手は恐怖ではない。
『ヤツら』の武器はそれじゃない。
僕は脛を噛ませたままにして、『ヤツら』の頭頂部を手で抑え、鉈をグリグリ捻り『ヤツら』の額から引き抜く、そして脛から口を一瞬放した隙に、渾身の力で鉈の先端を『ヤツら』の口内に突っ込む……
「コンコンコッ……ガリガリ、ガガッ……」小気味良い音を立てて鉈は歯を内側にへし折りながら口内を進む。
相手の武器を潰す。
戦いの際に率先して行う事……『ヤツら』の武器……僕達の肉を喰らう為の顎と歯を破壊する。
鉈を捏ね繰り回し、歯・頬・顎・舌を破壊する。
黒い血液が『ヤツら』の口から駄々漏れ……「ゴスッ、ゴッ、ゴキッ」渾身の力でお餅つきの様に鉈を押し込む。
……嫌な感触……
僕の鉈は、『ヤツら』上顎を突き破り、鼻の裏側に侵入するした様だ……もう少しで脳……
……抵抗が無くなった……鉈がズブリと入っていく。
『ヤツら』は痙攣する。
僕を握っていた手の力が弱まる。
目的地に達した様だ。
僕は、『ヤツら』を押し退け、更に鉈を押し込む……刃の大半が『ヤツら』の頭の中に埋まる。
刃の長さと向きから、『ヤツら』の脳内で刃がどこまで届いたか大凡想像がつく……小脳だ……知覚と運動を司るカリフラワーみたいな部位……そこを鉈で押し潰しているのが判る。
押し込みが止まる。
後頭部の頭蓋骨裏に鉈の先端が辿り着いた。
同時に『ヤツら』の痙攣が弱くなる。
もう、虫の息……
鉈を頭蓋内でアチコチにぶつけながら漸く引き抜く。
ピンク色のゼリーに赤黒い血を擦り付けた鉈が出てくる。
流石にえづく……しかしまだ殺る事がある。
僕は疲れた身体を叩き起こし、脳漿でドロドロになった鉈で『ヤツら』の首を落とす……the end。
やっとこさ、排除……出来た。
『ヤツら』の身体だけが時々痙攣の様に動くが……何時もの事だ『ヤツら』はいつもそうだ……中々止まらない。
取り敢えず、脳漿を『ヤツら』が着ていたぼろ切れで拭く……頭が無いから、噛まれる心配がない。
それでも、僕をまだ掴みたいのか、フラフラあさっての方向へ手を動かしている。
ちゃんと鉈を洗いたい気持ちを我慢して、鉈をケースに仕舞い、バイクに駆け足で戻る。
一刻も早く……橋を渡りきる……当初の目的を思い出す……バイクに跨がり、即出発。
残りの橋を疾走する。
陸に至る道が見えてくる……もう橋は終わる……何とか、渡りきれそう。
僕は少し安心して……バイクの上で伸びをする……両手を離して、肩をグルグル回す。
1体仕留めるのにこの始末……A県に入り、複数との戦闘になった場合、僕はどうしたら良いのだろう。って言うか……逃げるが勝ち……それしかない……そんな事を考えながら、A県に入った。
N古屋市に向かう……のだ……『ヤツら』との接触は避けられないだろう。
僕は震える……これが武者震いなら良いのだけれど……
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