謎の人

勝利だギューちゃん

第1話

本屋さんで、一冊の詩集を見つけた。

初めて見る本だ・・・

著者の方も、初めて見る。

得夢・・・

でも、舞がいなくペンネームだろう・・・

エムと読むらしい・・・


中身を見てみる。

ものすごく牧歌的な詩で、私は気にいってしまった。

「ひとめぼれ」と言ってもいいだろう・・・


著者紹介のところを見ると、「男性」とだけ書かれていた。

私はこの著者の興味を持った・・・


そして、出版社に電話して、この得夢さんについて、

と言わせてみた。


でも、「男性の方」としか、答えてくれなかった。

素情は、知られてくないようだ・・・


まあ、作家ならよくあることなのだが・・・


私はそれから、彼の本を買い集めた・・・

せっせと、ファンレターも出した・・・

でも、当たり前だが、返事はこなかった・・・


しかし、その事で、この得夢という人に、ますます興味を持った。

(一体どういう方なんだろう・・・)


私のクラスには、ひとりの男の子がいる。

いつも、誰とも行動せずに、ひとりでいる。

寡黙な子だ・・・


最初のうちは、みんな声をかけていたが、

あきらめたのか、今はそっとしている。

私も、そのひとりだった・・・


勉強もスポーツも、苦手な子だ・・・

ただどことなく、他の人とは違った雰囲気があった。

そして、学校が終わると、すぐに帰宅する・・・


私は彼にも、興味を持った・・・


ある日、ラジオに得夢さんが、ラジオに出演すると知った。

これまでメディアには一切出てこなかったが、「音声を変える」という条件で、

出演を承諾したようだ。


私は、わくわくして、その日を待った。

そして当日、ラジオのスイッチを入れた。

私は、ドキドキしていた。


その得夢という方は、とても寡黙な方のようで、

必要以上には、話さなかった。

DJも、打ち合わせの段階で、その事は知っていたようだ。

でも、誰かに似ている気がした・・・

(しょっちゅう、会っているような・・・)


しかし、DJのある質問に、私は驚いた。

「PNの由来は何ですか」と、いうものだ・・・

「名前のイニシャルです」

そう得夢さんは、答えた・・・


確か、エムと読む・・・という事は、イニシャルはMになる。

私は、「まさかね」と思いつつも、生徒名簿を調べてみた。


あの男の子の名前が気になった。

一応確認しておきたかった。

(えーっと、会った)

「盛原 雅人」と書かれていた。

苗字も、名前も、共に頭文字はM・・・

もしかして・・・

そう思いつつも、私は翌日彼に訊いてみる事にした。


しかし、翌日彼は来なかった。

翌日だけでなく、その後学校に来ることはなかった・・・

中途退学したようだ・・・


周りは気にも止めなかった。


でも、私は気になった。

「どうしても、確かめたい」

でも、盛原くんと、得夢先生が、同一人物かどうか・・・

それを、確かめるのは一つしかない。


「それは彼の担当になること」


私は、一生懸命に勉強して、大学に入り。

一生懸命のがんばって、出版社に入り、

そして、ようやく担当になることができた。


いきなりはあれだろうと、上司の人が引き合わせてくれた。

仕事場に案内され、いよいよ確信になる・・・


しばらく待っていると、「お待たせしました」と、得夢先生がやってきた。

「あっ」

思った通りだった。


そこには、あの彼の姿があった。





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謎の人 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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