ギルティブレイブ ~『戦えば絶対に勝つ神託』を持つEXランク神託者とあがめられて、チヤホヤされてウハウハな件について~

佐倉唄

1章1話 金髪碧眼の美少女が、俺にかまってほしくて全裸になっている件について



「せ、先輩! 今、アタシの裸見ましたよね!? なら! 罰として決闘をしてください!」


 足を肩幅に開き、女の子らしい滑らかな曲線を描く腰に左手を当てる全裸の美少女。彼女、アンナ・ハーフェンフォルトはビシィッ、と、右手でアルベルト・ナハトヒューゲルを勢い良く指差した。


 ハッ、と、目が覚めて、息を呑み、時の流れを忘れるほど見惚れてしまう。

 それほどまでに、宝石を溶かして糸にしたかのような金色の長髪は清く、まばゆく、心底美しかった。


 瞳は絵に描いた晴天のような蒼色で、それを閉じ込めるパッチリした二重のまぶた

 それには恐らく、同性でさえ熱い溜息を零すほど、細くて長いまつげが生えている。


 まるで白百合に雪化粧を施したかのように、瑞々しく白い珠のような肌。

 しかし異性の前で生まれた時のような姿を晒しているせいだろう。色白の肌が裏目に出て、わかりやすいほどくっきり赤面していた。


 そもそも、見ましたよね。そう指摘する割には、むしろ自分から自分の全てを見せ付けている感じさえある。

 その証拠に――たゆんたゆんに実ったフワフワそうな胸も。その頂点に咲いて存在を主張している桜色の蕾も。トドメには男子禁制の乙女の花の楽園も。――まるで隠そうとしていないではないか。


 流れとして必然だった。少女としての可愛らしさ、瑞々しさ。大人の女性としての美しさ、艶やかさ。アルベルトはその2種類の魅力が両立している、第二次性徴期に相当するアンナの姿を目に焼き付けてしまう。流石に、不可抗力だと信じて……。

 しかしグッ、と、胸のドキドキを抑え、彼はアンナに反論を試みた。


「待て。裸を見たのは悪いと思うが、そもそも、ここは俺の部屋だ。普通、帰宅したら鍵を閉めていたはずなのに後輩が着替えているなんて、想定できないだろ」


 そう。確かに一見しただけでは、乙女の生まれた時のままの姿を見たアルベルトが加害者。恥ずかしいところを見られたアンナが被害者。と、決め付けてしまいそうなものだ。とはいえ、ここは本人の言うとおりアルベルトの自室なのだ。


 国立天罰代理執行官育成学園の第1寄宿舎、408号室。

 間違いなくここはアルベルトの自室で、要するにアンナは他人の部屋で着替えていた、ということになる。


 普通なら着替えるための服や下着を準備できない時点で気付くはずだが、違う。

『そう』ではない。

 これはアンナの『計画』なのだから。


「でも! 先輩がアタシの裸を見たって事実はなくなりませんし、今だって見ているじゃないですか! これはもう、決闘するしかありません! でないと、先輩に裸を見られた、って、学園中の噂にします!」


 ここでようやく(そろそろいいかな?)と思い、アンナは両腕で胸と股間を隠す。次に、ようやく恥じらいの概念を思い出したのか、初々しくも所在なさげに身体を揺らした。


 翻り、頭痛を覚え、眉間を指で摘まみ嘆くアルベルト。

 声には出さずとも、(落ち着け、僕、いや、俺は冷静な男だ。この程度で慌てて騒いだりなんてしない)と自分に言い聞かせる。


「いいだろう、ならば決闘だ」

「流石、それでこそ先輩です。アタシが勝った時の要求はただ1つ! 先輩が全学生の前で、自分はアンナ・ハーフェンフォルトに負けました! と、敗北宣言することです!」


「俺の方は無論、この状況の他言無用だ」

「あっ、決闘さえしてくれれば、このことは誰にも言いませんので。その……、恣意しい的な冤罪は名誉毀損ですし……。アタシだって、そりゃ、うん……、恥ずかしい、ですし……」


「チッ、本来の意味でも誤用としての意味でも確信犯か……。しかし、そうだとしたら、俺の方にお前に対する要求なんて1つもない」

「あぁ~、なら、メイドにでもなりますか? 先ほどキッチンが見えたんですけど、だいぶ洗い物が溜まっていたようでしたので……」


「……わかった。ならメイドになれ。俺はもう知らん。自分で言い出したことだからな? 事実、ちょうど家事と仕事の両立にも、限界がきていたところだ。奴隷のようにこき使ってやる」

「わかりました!」


 言い合って、無愛想なアルベルトと、なぜかすでに勝ち誇ったようなアンナ。

 アルベルトはこのような事態に陥っても絶対に冷静でい続けるし、アンナも頬に乙女色を差して照れているものの、極端に慌てたりはしない。


 だいたい、なぜこのような展開になってしまったのか?

 時は1日と数時間ほどさかのぼる。


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