エレクトロニック・フォリアドゥ

@Amato-0109

第1話

時は2019年5月16日

ネット上にアップされた1つの記事が始まりだった。

その記事は【1人で読むこと】と書かれたもので、そこには書き手の思想が書き連ねてあった。

その内容を要約してみると


「この世界は汚染されている。魂を汚染から守るためには、汚染された肉体から切り離す事」


と書かれていた。

世間は初め、おかしな記事がネット上に出回っているとしたが、青少年の精神衛生上宜しくないとされ警察によって記事は削除された。

しかし、ネットとは恐ろしいもので、1度出回ったものは決して消えないと言われる程で、その記事もコピペされたものが無数に増え、削除しきれなくなってしまった。




俺の名前は神崎龍太。格闘技経験も無し、ミリオタでも手先が器用って訳でもないごく普通の高校2年生だ。


「おう、たっつん。おはようさん〜」


俺に挨拶してきたのは同じクラスの三島輝。輝とは高校からの付き合いだが、昔馴染みかのように仲良くしている。


「おっす、輝」


俺は短く挨拶を返すと、輝と共に教室へ向かった。



「……というわけで、不審な記事が出回っているが、決して興味本位で開いたりしない事。いいな〜?話聞けよー三島。変なウイルスに引っかかってお前のスマホのフォルダがクラスのLI〇Eに乗っても知らんぞー」


「……んぁ!?ママ、俺は玉子焼きは甘いのが好きだ!」


「三島〜、お前のママ呼びも玉子焼きの好みも自由だが話は聞けよー?」


朝のホームルームで担任が輝をからかい、教室が笑いに包まれる。

全く、学校着いて早々に寝るかね?普通……

輝に呆れながらも、今日も1日が始まる。




同年5月23日。例の記事がネットに出回って凡そ1週間。ついに自殺者が出た。

自殺したのはとある高校の2年生男子。

「浄化します」とだけ書かれた遺書のようなものを残し自室で頸動脈をカッターナイフで切りつけ失血死していた。

第1発見者は男子学生の母親で、朝起きて来ないのを不審に思い、部屋に向かうと壁1面に飛び散った血と彼の血がべっとりついたカッターナイフがあり、警察に通報したという。

男子学生の友人に話を聞くも、いじめられていた様子もなく寧ろクラスのお調子者、ムードメーカーのような存在だったという。

男子学生の電子機器の履歴には例の記事を閲覧した痕跡があり、「浄化する」という1言を遺している事も鑑みても例の記事関連で間違いは無さそうだ。

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