第91話職場見学
朝食を済ませた清宏達は、皆いつも通りの作業に就いた。
まだ召喚されたばかりであるペインとアッシュは皆とはまだ完全には打ち解けていないため、清宏が水晶盤を用いて、城で行なっている仕事の内容を説明している。
先程まではローエン、グレン、レティの3人が、侵入者達を誘導している映像が映し出されていたが、今はビッチーズ達やツクダの映像に切り替わっている。
「マジでサキュバスに娼婦の真似事をさせてんのかよ・・・良く客がつくな?
それに、スライムに美容効果を持たせるとか正気とは思ねぇ」
「ビッチーズには、アンネとレイスが人間に対する接し方なんかを徹底的に教え込んだんだよ・・・まぁ、それだけじゃなく、彼女達がリリスや俺の考えに賛同し、生きる為に自ら選んでくれたのが一番の理由だけどな。
ツクダは俺が望んで召喚して貰ったんだが、言葉も理解するし意外と可愛いぞ?しかも、何故か2体に増えたからラッキーだったわ」
隣で呆れているアッシュに、清宏が苦笑しながら説明をすると、清宏の頭に見事な双丘を乗せて水晶盤を覗き込んでいたペインがため息をついた。
「まぁ、結局はそうなるのであろうな・・・サキュバスは性に貪欲であるが、それは生きる為の行為が自らの命の危険にも繋がっているのである。
彼奴らも・・・いや、痛みに耐性を持ち防御力に長けた我輩であっても、ただ生きる為の行為で死にたいなどと思いはせん。
同じ死を選ぶならば、我輩は自分の納得のいく死に様を選びたいのである・・・」
「アッシュ、答えを出すのはまだ先で構わないが、彼女達みたいな生き方もあるってことは知っておいてくれ。
俺は、お前が望むなら出来る限りのことには応えてやるつもりだ・・・お前の狼人の仲間達も、そいつらが俺の指示に従って人族との共存の道を望むなら、快く迎えてやる・・・だが、まずはお前が決めてくれ」
アッシュは清宏の提案に顔を背けたが、否定しないところを見るとまだ決めかねているようだ・・・昨夜、微妙な空気でありながらも、ローエン達と共に夕飯を食べ、風呂に入った事で彼等に対する苦手意識は若干薄れたようだが、完全に打ち解けるにはまだ時間が掛かるだろう。
彼等との生活の中で、アッシュの気持ちが少しでも動いてくれたらと清宏は考えているため、答えを急かさないようにしているようだ。
3人が真面目な話をしているにも関わらず、水晶盤からはビッチーズ達の喘ぎ声と、ツクダブラザーズによって陵辱されている女達の悲鳴が聞こえてくるため、まったくもって締まらない・・・清宏はそれに苦笑すると、無言で映像を切り替えた。
「次は俺の工房だな・・・今はシスとウィルが宝箱に入れるアイテムの製作中だ。
魔道具製作の時にはアンネも工房で作業するが、値が付きそうな物以外は基本あの2人に任せている・・・2人共そろそろスキルがランクアップしても良い頃合いだろうから、ランクアップしたらもっと手の込んだのを任せるつもりだ」
「貴様は普段は何を造っておるのだ?」
「俺は皆の仕事の監視や、新しい罠とか仕掛けの製作もしなきゃならないし、基本的には設計図とサンプルを用意した後はアンネに任せてるよ。
後は、ラフタリアの弓みたいに向こうの世界の技術を応用した物を造ったりと暇そうに見えて結構忙しいんですのよ?」
清宏はペインに説明をしながら、いくつかの設計図を取り出した。
ペインとアッシュは、渡された設計図を見て首を傾げている。
「さっぱり解らんな!」
「こういったのを見ると眠くなって来るんだよな・・・」
「うん、お前達に理解して貰おうとした俺が馬鹿だったわ・・・」
清宏は2人の反応にため息をつき、映像を切り替える・・・次に映し出されたのは、リリスとアルトリウス、ラフタリアの3人がアリーとオスカーのおもちゃにされている映像だった。
「ふはははは!流石のアルトリウスも子供には勝てんと見える!いい気味であるな!?」
「マジかよ・・・髪が乱れただけでキレてたあの男が馬にされてやがる」
「まぁ、魔族だって周りの奴次第で変わるってことだよ・・・実際、あいつと初めて会った時の印象は最悪だったからな。
変なポーズをとりながら自分を美しいとか言ってるの見たら、頭大丈夫かと心配になったぞ・・・。
だけど、あいつも今ではリリスや俺を信頼して付いて来てくれてる・・・俺がリリスそっちのけで作業が出来るのは、あいつが常に守ってくれているおかげだよ」
清宏は映像を切り替え、次に厨房を映し出す。
すると、清宏の背後から腹の虫が鳴った・・・ペインは腹を空かせているようだ。
ペインは恥ずかしそうにしながら、人差し指で頬を掻いた。
「もう少しで昼飯だから我慢しろ・・・肉しか食わないお前達と、野菜しか食わないラフタリアの為にアンネとレイスが苦労してんだから感謝しろよ?
普段なら俺も手伝ってるんだが、お前達を放って置く訳にはいかんからもう少し待っててくれ」
「なんか申し訳ないのであるな・・・だが、我輩達はまだ良いであろう?
なにせ、我輩達は本来の食事自体が肉であるから、魔石を摂る必要が無いのであるからな!」
ペインの言葉にアッシュも頷いている・・・清宏は振り返ると、それを見てニヤリと笑った。
「まぁ、そうなんだけどな・・・お前達がそう言うなら。面倒だし味付けなしの生肉にしてやろうか?」
「メェ、汚ねーぞ!?」
「贅沢を言わんから味付けして欲しいのである!
昨夜と今朝の料理は、大変に美味であったからな・・・我輩、人族の料理というものがあれ程までに素材の味を底上げするとは思っていなかったのである!あれを知っては、もはや元の食事になど戻れないのである!!」
「解ってるよ、冗談なんだからマジになんなよ・・・。
さてと、そうこう言ってるうちに昼飯の時間だな・・・今から他の奴等を呼び出すから、テーブルの用意でもしててくれ」
清宏はテーブルの準備を2人に任せて他の者達を呼び出す。
2人は何だかんだ言っていても昼食が楽しみだったらしく、嬉しそうに指示に従った。
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