第18話取引

 清宏は街の入り口に辿り着き、門の外から中を見る。

 通りには結構な数の店屋が並び、多くの人で賑わっているようだ。


 「へぇ、思っていた以上に大きいな・・・ここの住人を引き込めれば結構な収入になるだろうな」


 「おい兄ちゃん、道の真ん中で立ち止まると邪魔じゃ、すまんが退いてくれんか?」


 清宏が街中を観察していると、後ろから声を掛けられて振り返った。

 そこには、ロバに荷車を引かせた老人が立っていた。

 荷車には質の良さそうな野菜が積んである。


 「あぁ、これは申し訳ない・・・この街に来るのは初めてで、どうしたもんかと困ってたんだ・・・。

 爺さんはよくこの街には来るのか?」


 「そうじゃな、週一で来とるよ。

 なんなら案内してやっても良いぞ?」


 「そいつはありがたい!正直、行きたい店が何処にあるかもわからなくてな・・・。

 素材や魔道具なんかのアイテムを買い取ってくれる店まで案内してくれたら助かる」


 老人は頷くと、清宏を手招いて荷車に乗せた。


 「この街は活気があって良い街だな?」


 「そりゃあの・・・じゃが、これでも大分少なくなってしまったんじゃよ。

 この街の近くに城があるじゃろ?あの城はな、随分と昔になるが当時最強とまで謳われた魔王の住んどる城だったんじゃ。

 その魔王は当時の勇者によって倒され、この辺一帯は平和になった・・・そして、城に残された宝を目当てに冒険者達が集まり、其奴ら相手に商売をするため、商人なんかがこの街を興したんじゃよ。

 それももう何百年も前の話じゃ・・・残された宝もほぼ取り尽くされ、この街に旨味は無くなり、徐々にではあるが人が離れていった。

 じゃがそう思っておった矢先に、最近になってまたその城で宝が手に入るようになったらしくての、噂を聞きつけた冒険者達がまた集まって来とるみたいなんじゃ。

 巷では魔王が復活したのではないかと不安がる者も多いが、その反面また活気が戻って得をしとるのも事実じゃ・・・。

 じゃが、ひとつ解せんのは、城に行った者達にただの1人も死人が出ておらん事じゃな・・・それが不気味でもある」


 「仮に魔王が復活していたとして、もしかするとそいつには殺す意思が無いって事じゃないのか?平和を望んでるとかさ・・・」


 清宏が尋ねると、老人は豪快に笑った。


 「はっはっは!それならありがたいの!!

 じゃが、そんな事はあるまいて・・・人族と魔族は対なる存在、過去に何度も大きな戦があった。

 互いに恨みこそすれ、和睦など出来るはずはない・・・それ程、人族と魔族の溝は深いんじゃよ」


 老人は苦笑しながら清宏を見る。


 「爺さんは、もし人と魔族が和睦を結ぶ事が出来たなら嬉しいか?」


 「そうじゃな・・・争いは何も生まん。

 いや、一つだけ生まれる物があるの・・・」


 「それは何だ?」


 清宏が尋ねると、老人はため息をついた。


 「悲しみじゃよ・・・。

 もう30年も昔になるが、儂の一人息子はな、人族同士の戦争で命を落としたんじゃよ・・・同族であっても争い、命を落として悲しみが生まれてしまう。

 戦う相手が魔族だろうとそれは変わらん。

 もし人と魔族が和睦を結び平和が訪れるなら、悲しい思いをする者が減る・・・そうなるなら儂は大歓迎じゃよ」


 老人は笑顔で答えた・・・だが、その笑顔には深い悲しみの念が感じられる。


 「いつかそうなったら良いな・・・」


 「ははは、そうじゃな・・・どれ、着いたぞ」


 老人は荷車を止め、大きな建物を指差した。

 看板にはオズウェルト商会と書かれている。


 「ここが魔道具や魔石なんかの売買を専門としとる商会じゃよ。

 ここの商会は国内外にいくつもの支部を持っとっての、ここなら相場に応じて適正な価格で買い取ってくれるはずじゃ」


 「ありがとう、助かったよ。

 もし良い値で売れたら、爺さんの商品を買わせて貰うよ」


 「期待せずに待っておるよ」


 清宏は老人と握手を交わして別れると、商会の扉を開けて中に入った。

 店内は明るく、床や壁際には余計な物を置いておらず、清潔感があった。


 「いらっしゃいませ、今日はどの様なご用件でしょうか?」


 清宏が受付に近づくと、それに気付いた制服を着た女性が丁寧にお辞儀をした。

 他の店員の態度も教育が行き届いており、清宏の近くを通る時には必ず立ち止まり、挨拶をして行く。


 「魔道具や魔石の買取をお願いしたくて来たんだが、ここで良いのかな?」


 清宏が尋ねると、女性は柔らかく微笑み再度お辞儀をした。


 「はい、こちらで承っております。

 お客様は、当店のご利用は初めてでございますか?」


 「あぁ、今日が初めてだ。

 どの様な流れで買取をしてくれるのかな?」


 「当店の買取の流れでございますね。

 当店では、まず魔道具に関してはお持ちいただいた物をお預かりし、正常に作動するかなどを確認した上で査定し、買取金額を提示させていただきます。

 万が一買取金額にご納得いただけなかった場合には、そのままお持ち帰りいただく事になります。

 次に魔石ですが、こちらは属性付与されているか、大きさやキズ等の確認を行い、そこから買取金額を提示させていただきます。

 ただ、魔石はそれぞれ蓄えられている魔力量が違うため、そちらを計測してからの買取となると数日ほどお時間をいただきます。

 計測不要であれば、その場で買取査定をさせていただきます。

 こちらもご納得いただけなかった場合にはお持ち帰りいただく事になります。

 他に何か質問などございますでしょうか?」


 女性は清宏に質問され、事細かに説明をした。


 「いや、十分だよ。

 この店は従業員の教育が行き届いてて気持ちが良いね」


 「お褒めの言葉をいただき、恐縮でございます。

 では、お持ちいただいた魔道具および魔石の確認作業をいたしますので、こちらで預からせていただきます」


 女性は笑顔でお辞儀をし、底の浅い箱のような物を取り出した。

 箱の底には緩衝材が敷いてあり、客の持ち込んだ品を傷付けないための配慮がなされている。


 「ん?あぁ、すまない・・・物を出さなきゃ確認のしようがないよな。

 どうも初めてきた店だと緊張してしまって・・・」


 清宏が謝ると、女性は首を振って笑った。


 「いえ、どうかお気になさらないでください・・・私もこのような店で働いておりますが、初めて入るお店では緊張してしまいますから」


 女性は嫌味のない自然な態度でフォローをし、清宏の準備が終わるのを急かさず、じっと待っている。

 その間、彼女の笑顔が崩れる事は一度もなかった。


 「いやぁ、お待たせして申し訳ない・・・これで全部です」


 「ありがとうございます。

 では念の為、再度確認をお願いいたします・・・」


 女性は清宏の出した魔道具を見て、一瞬困惑した。


 「あの・・・こちらが今回査定をご希望の魔道具でしょうか?」


 「あぁ、今のところこの3種類だ・・・どうかしたのか?」


 「いえ、初めて見る魔道具でしたので・・・」


 「あぁそうか、説明してなかったね・・・これは俺のオリジナルなんだ。

 どのくらいの価値が付くのか知りたくてね・・・そういうのはしてなかったかな?」


 「作用でございますか、問題はございません。

 当店では、オリジナルの魔道具の鑑定、買取も承っております。

 ただ、少々お時間をいただきますので、こちらの席でお待ちいただけますでしょうか?」


 女性は清宏の説明を聞いて再び笑顔になると、受付正面の席に案内をし、清宏の魔道具を持って店舗の奥に入って行った。


 「はぁー・・・マジで感心するわ。

 今のところ、俺的には接客はパーフェクトだな・・・。

 態度も自然だし、笑顔も営業スマイルとは違って嫌味が無い。

 受付は企業の顔だからしっかりしてないといけないのはわかるけど、あんな対応見せられたら何度でも来たくなるわ・・・。

 支部の対応であのレベルって事は、他の店舗も徹底してるんだろうな」


 清宏は席に座りながら唸っている。

 すると、先程の女性が清宏の元に慌てて戻ってきた。


 「お客様、お待たせして申し訳ありません・・・責任者が、魔道具に関して説明をいただきたいとの事ですので、奥の応接室までお越しいただけますでしょうか?」


 「あ、何か問題ありました?」


 女性は息を整えると、笑顔で首を振る。


 「いえ、何も問題はございません。

 どの様な使い方をするのか説明をいただきたいとの事です」


 「わかりました」


 清宏は席を立ち、女性に案内されて応接室に向かった。

 応接室に入ると、2人の男性が興味深げに清宏の魔道具を調べていた。

 1人は受付の女性と同じ様な制服を着た50代ほどの男性、もう1人は綺麗な刺繍の施された服を優雅に着こなした30代後半ほどの男性だ。


 「おぉ、本日はご来店いただき誠にありがとうございます!

 私の名はクリス・オズウェルト、当商会の代表を務めております。

 こちらはここの支部長を務めるマイクと申します。

 私は珍しい魔道具に目がなく、今回は大変興味深い魔道具をお持ちいただいたとの事で、私自ら説明を賜りたいと思いこちらへお越しいただきました」


 2人の男性は、清宏を見て深々とお辞儀をしている。


 「いえ、お気になさらず。

 それにしても、こちらは国内外に支部を持つ程の大きな商会とお聞きしましたが、なぜ代表である貴方がここに?」


 清宏が尋ねると、クリスは肩をすくめて苦笑した。


 「お恥ずかしい話ではありますが・・・ここ数年、こちらの支部の業績が少々落ち込んでおりまして、原因などを調査するため視察を行っておりました。

 業績が落ち込むのはどの支部でも起き得る事ですので、今後の為にも情報を集めていたところです。

 ですが、私は運が良い・・・視察の時期が数日ずれていたら、この様な魔道具を見る事が叶わなかったのですからな!」


 クリスは嬉しそうに笑っている。

 後ろに控えているマイクは、心なしかホッとした表情をしている。


 「では、こちらの魔道具についてご説明願えますか?」


 クリスは目を輝かせながら身を乗り出した。


 「まずは自己紹介を・・・私の名は清宏、異国の生まれでございます。

 本日は偶然にも代表殿に御目通りが叶い、身に余る思いでございます」


 清宏はクリスに深々と頭を下げ、仕事モードに入った。


 「本日鑑定をしていただきたい魔道具ですが、こちらは全て日用品でございます。

 私個人で調べたところ、こちらの国を始め、他の国々でも魔道具として生産されているのは武具などが主で、日用品はそれ程積極的に生産されていない印象を受けております」


 清宏は城で魔道具作成をする最中、書物やリリスの話しで得た情報から話をする。


 「私は、日用品とは日々の生活を豊かにするとともに、人々の心や時間に余裕を持たせる物だと思っております。

 では一つ目の魔道具ですが、こちらは扇風機と申します。

 説明の前に一つお聞きしますが、クリス殿は暑い日にはどの様にして涼をとっておられますか?」


 クリスは清宏に問われ、答えが出せず唸っている。

 清宏はそれを見て話を続けた。


 「私の生まれた国では、水風呂に入って汗を流したり、桶に水を張って足を冷やしたり、打ち水をするという習慣もございました。

 他にも団扇で扇いだり、窓を開けて風を取り込むなども凉をとる方法だと思います。

 ですが、水風呂はいつでも入れる訳ではなく、桶に水を張って足を冷やすのも仕事中には出来ず、打ち水をしてもすぐに乾き、団扇で扇げば手を動かさねばならず、窓を開けても風が無ければ涼しくはありません・・・」

 

 クリスとマイクは揃って頷く。

 清宏はそれを見てニヤリと笑った。


 「では、この扇風機という魔道具ですが、これは魔石によって風を起こし、凉をとるための物なのです。

 これがあれば、水風呂も水を張った桶も打ち水も要らず、団扇で扇ぐ必要も無く、風を待つ必要もありません。

 見ての通り非常にコンパクトですし、運用も起動させるだけと非常に簡単な造りになっておりますので、執務室などでご自身の近くに置いていただいたり、受付カウンターの裏に置けば、受付嬢の方々の仕事も捗るでしょう・・・受付は企業の顔ですから、清潔感のある涼しい表情をされていた方がより多くのお客様にご満足いただけるサービスが可能かと思っております!」


 清宏は高らかに宣言すると、扇風機を起動させた。

 クリスとマイクは突然起こった風に驚いたが、すぐに涼しそうな表情を浮かべた。

 清宏の造った扇風機にはプロペラが無いので、厳密には扇風機ではない。

 だが、風属性の魔石から発する風をパラボラアンテナのような物に反射させる事で、直接風を発生させるより広い範囲に拡散出来る構造になっている。


 「うーむ、これは南国や砂漠地帯などではかなり売れるかもしれんな・・・」


 クリスは起動した扇風機をじっくりと観察し、真面目な表情でボソボソと呟いている。


 「用途は限定されますが、暑い場所では必需品となる可能性が高い魔道具だと思っております」


 清宏の言葉を聞き、クリスは無言で頷く。

 清宏は少し間を開け、次の魔道具を手にとる。


 「次はこちら、ドライヤーと申します。

 こちらは、入浴後に髪を乾かすのに用います。

 構造は、風の魔石によって発する風を、火の魔石で温めるというものです。

 普段お2人は、入浴後はタオルで頭を拭き、その後は自然乾燥をされているかと思います。

 ですが、それでは雑菌が増殖して匂いや痒みの原因となり、髪を痛めてしまうのです・・・。

 ですが、このドライヤーを使えば、素早く髪を乾かす事が出来、頭皮の健康を保ち、寝癖も付きにくくなります。

 それ以外にも、水をこぼして服が濡れてしまった時に乾かす事も可能です。

 髪は女性にとっては命のような物・・・これは女性にとって素晴らしい魔道具だと思っております」


 「確かに、美に対する女性の意気込みは並々ならぬものがある・・・女性客をメインに据えて商品化すれば、こちらもなかなかの収益になるか・・・」


 クリスは完全に商売人の顔になっている。

 経営者はそうでなくてはならない・・・会社とは個人で運営しているのでは無く、多くの人の力によって成り立っているからだ。

 経営者には、自身の下で働いている者の生活に対する責任がある。

 それを成さぬ者には経営者の資格は無いと言えるだろう。


 「清宏殿、最後の魔道具についてご説明願いたい」


 クリスは清宏の目を見る。

 清宏は頷き、最後の魔道具に手を伸ばした。


 「私が今回ご紹介する魔道具はこちらが最後になります・・・。

 この魔道具の名は冷蔵庫・・・食材などを低温で冷やす事で、食材により異なりますが、通常よりも長い期間の保存が可能になる魔道具でございます・・・」


 清宏の言葉を聞き、クリスとマイクは息を飲んだ。

 この世界では、基本的に食材管理は常温だ。

 常温では、気温や湿度の変化によって食材の保存期間も大きく変わってしまう。


 「何故食材の保存期間の延長が可能になるかと言いますと・・・人間を始め動物や植物など、生きとし生けるものは全て細胞という名の小さなパーツの集合体なのです。

 細胞は一つ一つの全てがそれぞれ生きており、それが体内で何度も死に、何度も生まれかわる事で我々は成長し、生活しております。

 食材の腐敗とは、微生物に細胞が破壊され、分解される事で起きる現象なのです。

 この冷蔵庫という魔道具は、氷の魔石の力で庫内を低温に保つ事で微生物の活動を抑制し、保存期間の延長を可能にしております。

 私は、この冷蔵庫こそが今回ご紹介した魔道具の中で最も便利であり、人々の生活を変える魔道具であると自負しております」


 清宏の説明が終わり、応接室内に長い沈黙が流れる。


 「清宏殿・・・貴方はこれらの魔道具の量産は可能ですか?」


 長い沈黙を破り、クリスは清宏に尋ねる。


 「不可能ではありませんが、私だけでは大変時間がかかるかと思います・・・。

 そこで、私からご提案があります」


 「何でしょう?」


 クリスが聞き返すと、清宏はアイテムボックスを開き、書類を取り出した。


 「私が、本当に買い取っていただきたかったのは、こちらです・・・」


 「これは・・・!?」


 清宏から受け取った書類に目を通し、クリスは目を見開く。


 「扇風機、ドライヤー、冷蔵庫の設計図及びその製造と販売に関する権利書です・・・貴方なら、これをいくらで買い取りますか?

 これは私の独り言として受け取ってください・・・私はまだこの国の通貨に疎く、価値も把握しきれていません・・・さぁ、貴方はどうしますか?」


 それを聞いたクリスはニヤリと笑い、清宏を見た。


 「では、私も独り言を・・・この国の通貨は、大小の金貨、銀貨、銅貨の6種の通貨で成り立っている。

 大金貨1枚あれば、4人家族の一般家庭が3カ月は遊んで暮らせる金額だ・・・。

 それにしても清宏殿は人が悪い・・・それを聞いた私が買い叩くとお思いか?

 私はこれまで、公明正大を是として商いをしてきた・・・。

 例え貴方がこの国の通貨の価値を知らずとも、私は適正な価格を提示させていただく!」


 クリスは清宏を見据え、言い放った。


 「貴方ならそう言ってくれる思っていました・・・その設計図と権利書は、貴方の言い値で売りましょう。

 ここは良い店だ・・・受付のお嬢さんも親切で丁寧な対応を心掛けていましたし、他の方々も常に客を気遣っていた・・・これは貴方の指導の賜物でしょう。

 その時点で、私はこれを貴方に託そうと思っていました。

 悪業はいずれ人の目に留まり、善行は語らずとも広く知られる・・・商会がここまで大きくなったのは、貴方が公明正大を是とする信念を貫いたからだと思います。

 願わくば、今後とも良き取引相手としてお付き合いいただきたく思います」

 

 清宏が手を出すと、クリスはその手を取り固く握手を交わした。


 「こちらこそ宜しくお願いいたします。

 マイク、ここの金庫にはいくらある?」


 クリスに問われたマイクは、清宏に聞こえないように耳打ちする。


 「むぅ・・・清宏殿、申し訳ないが数日待ってはいただけないだろうか?

 数日中には本店から運ばせますが・・・」


 「いくらで買い取る予定ですか?」


 清宏に問われ、クリスは腕を組む。


 「私が提示する価格は、魔道具は設計図と権利書との事ですので、大金貨3000枚を考えております・・・本当は冷蔵庫2000枚、扇風機とドライヤーは1000枚ずつの4000枚と言いたいところなのですが、冷蔵庫は間違いなく売れるでしょうが、扇風機とドライヤーは購買層が限定されてしまいますから500枚とさせていただきます。

 属性付与の魔石に関しては、傷も無く大きさも申し分ないため、小金貨5枚を考えております。

 ただ・・・現在ここには大金貨が2000枚しか無いのです。

 残りは後日ということにしていただけませんか?」


 クリスは申し訳なさそうに頭を下げる。

 清宏はそれを見て笑い、頭を上げさせる。


 「私は先程、貴方の独り言でこの国の通貨の価値を学びました。

 残りの1000枚は授業料として取っておいてください。

 それに気が引けるのなら、次の取引の際色を付けていただけたら構いません」


 「清宏殿、貴方には感謝してもしきれません・・・マイク、急いで準備をしてくれ。

 さぁ清宏殿、準備にはまだ時間がかかりますゆえ、宜しければ貴方のお話をお聞かせいただきたい!」


 クリスと清宏はソファーに座ると、先程の受付嬢がお茶を運んできた。

 2人はしばらくの間、魔道具談義に花を咲かせた。

 




 


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