1×1=1+2:1+1+(1+1)÷2

カゲトモ

1ページ

「朝、何時に出るんだ」

「ん~、昼前だよ」

「なら昼飯はどうする?」

 どうするって。さっき晩御飯食べたところなのに明日の昼飯の話って・・・いや、もう深夜二時か。

 時計の針が目蓋を閉じている間に随分と進んでいたことに気が付いた。いつの間に俺は眠ってしまっていたんだ。

「お前、酒が弱くなったんじゃないのか?」

「そんなことないって」

 俺はバーテンダーだよ? 朝まで飲むことだってあるのに、弱くなっただなんて・・・ないよね?

 ぐーっ、とちゃぶ台の下で両手と両足を伸ばして伸びをする。驚くくらいしっかりと目が覚めてしまった。

 晩酌の後に気持ちが良くなって寝てしまったみたいだ。

「これ飲んだからかもな」

 そう言って父親が見せたのは見覚えのあるボトル。「あ」と声が出た。それは父親も飲んだら記憶をなくすと噂の泡盛だった。

「え、父さん大丈夫だったの」

「そんなわけないだろ」

 そんなわけないのかよ。なんでそんなに堂々と即答してんだ。

「俺も飲んだの?」

「多分な」

「何言ってんの、多分じゃないわよ」

 酔っぱらいの会話に呆れたような声が放り込まれる。

「しっかり飲んでいたじゃないの。止めても飲んでいたくせに」

「うそ」

「こんなことで嘘を吐いてどうするの。全く二人とも飲んだら饒舌になって寝るタイプだから良いものの、暴れるようなら家から追い出していたわよ」

 風呂上りなんだろう、タオルを肩に掛けた母親はグラスに入った透明な液体を一気に飲み干した。泡盛ではなく水だ。

「ぼーっとしてないでさっさと布団へ行って頂戴」

 父親は言われた通りに、スッと立ち上がると何事もなかったように階段を登って行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る