自分の足で・・・

勝利だギューちゃん

第1話

暗闇の中を1人で歩いていた。

止まることも、戻ることも許されない。

ただ、歩き続けるしかなかった・・・


でも、さすがに限界だった。

もう疲れ切っていた。

「やはり、僕では無理なのか?」

そう思った時だった。


「大丈夫だよ」

声がした。若い女の子の声だ。

姿は見えない。

「君はまだ、歩き続ける事が出来る」

そういって、暗闇の中から、右手だけを差し出してきた。

僕は、その差し出された手を握った。


(とても、温かい)


そして、僕を引っ張った・・・


気が付くと、僕は今度は真っ白な空間にいた。

さっきとは真逆だ・・・

変わらないのは、歩き続ける事だけだった。


僕はひたすら歩き続けた。

今度も、止まることも戻ることも、許されなかった。


僕はまた、ひたすら歩き続けた。


さっきもそうだったが、飲まず食わずだ。

でも、餓えも渇きもなかった。


(ここは夢のなかなのか・・・)


頬をつねる。

「痛い」

夢ではないようだ・・・


また歩き続ける。


でも、今度も限界が来た・・・

投げ出そうとした時、さっきの女の子の声がした。


「大丈夫。君はまだ歩き続ける。」

そしてまた、手だけが差し出されてきた・・・


僕はそれを握りしめる・・・


すると今度は、暗闇でも真っ白な空間でもなかった。

見慣れた風景が、そこにあった。


「合格ね」

3度目の女の子の声がした。

ふりかえると、その声の主がいた。


「あなたは、私の差し出した手を握った。

なぜだかわかる?」

「わからない」

「それは、あなたが前に進むことを、生きる事を望んだからよ」

「どういうこと」

僕は彼女に訪ねた。


「あの時、もしあなたが、なげやりなっていたのなら、

私の手を振り払う事ができた。でもそれをしなかった。」

「うん」

「それは、あなたが『このままではいけない』と自分で気付いているからなの」

「・・・そんなことは・・・」

「今は、自分では実感がないけど、すぐに湧いてくるわ」

彼女の言葉には、あいまいな返答しかできなかった」


「ここは、どこ?」

「ここは、あなたが過去に見てきた風景や町があるところ。

ここでは、過去のあなたを自分で見る事ができるわ」

「過去のぼく?」

「覗いてみる?」

彼女の質問に、僕は首を横に振る。


「そう言うと思ったよ」

「どうして、僕の事がわかるの?」

「今は言えないわ」

「えっ」

僕は、気になったが、それ以上は訊かなかった。


その後、僕は普段の生活に戻った。

気が付いたら、ベットの中にいた。


あの場所での出来事は、おぼろげになっているが、覚えている、

ただ、あの女の子の、「今は言えないわ」だけは、気になっていた。

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自分の足で・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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