ビタレスト・チョコレート
はんげつ
1
上には曇り空、下にはアスファルト。その間を歩くわたしたちは、黒と白。
この陰鬱な灰色のサンドイッチは、わたしたちという絵の具が混ざり合ってできたものではないかと、昨夜来の悪天候のせいで、やや気分を持ち上げられないわたしは思った。
わたしが、学校オリジナルの紺のブレザー――といっても、わたしの目からはほとんど黒に見える――を着用している一方、隣を歩く、幼なじみの
「あんた、ブレザーはどうしたのよ。風邪を引きたいの?」
と、互いの家の近くで合流した時に訊いてみると、
「ああ、うん、着ようと思ったんだけど、見つからなくて。遅刻しそうだったし、まあいいかな、と」
「もう……ほんっとにズボラなんだから」
昔からアキラは、どんくさいというか、だらしないというかで、いつもわたしが世話を焼いてやっている。しかし、家の中まではさすがに面倒は見られないので、家庭内では妹のトキがその役目を担っている。兄のアキラが童顔、妹のトキが中性的な顔であるため、見た目はそっくりな兄妹だが、中身は大違いである。
「そういえば、トキちゃんはいなかったの?」
「それが、今朝は部活で早く出たみたいで。お父さんとお母さんも旅行でいないし。今日の朝は一人だって、起きてから気づいた」
わたしのため息が合図になったかのように、のんきそうなアキラが歩きだし、こうして今、二人で学校へ向かっているというわけだ。
わたしこと
幼稚園に通いはじめた頃にはもう、世話を焼き、焼かれる、という関係ができあがっていたらしい。連れ回し、連れ回される、という関係だという説もあるが、よくわからない。
ある日、幼稚園へ送り迎えに来たわたしの母親が、何事もすばやい行動を好み、活発だったわたしと、放っておくといつも黙って何かを考えているアキラの二人を見て、こう言った。
「あなたたちは、〈ウサカメコンビ〉ねえ」
互いの苗字から安直に命名されたわたしは、「それって、わたしがアキラに追い抜かれるということなのでは?」と、心の中で鋭いツッコミを入れた。果たしてアキラにそんな器があるのだろうかと軽く考えながらも、ぼんやりと焦りを覚えたのか、それ以来、彼の世話焼き役でいつづけようと強く意識するようになった。
とりとめのない話をしながら道を進んでいると、わたしたちが現在所属している県立
わたしは、自分の成績のレベルに合った高校を選び、アキラは、自転車を含めた乗り物全般が苦手で、徒歩で通える高校を選んだ。その両者が、たまたま、この県立楓山高校だった、という経緯がある。
もう十分ほど歩くと、ようやく校門と、その前に毎朝立っている生活指導の
鮫島先生が不思議そうな目でこちらを見てくるのをよそに、わたしは、いつもの光景の連続から、今日という一日の始まりを改めて感じ、希望的な気分が甦ってくる感覚を覚えた。
今日という一日が、わたしとアキラの関係を一変させるということを知ることもなく。
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