勝利だギューちゃん

第1話

私が高校生の頃・・・

もう3年も前になりますね・・・


クラスメイトに変わった男の子がいました・・・

いえ、不思議と言った方が適切でしょう・・・


その子がいつも、空を見ていました。

晴れの日も、曇りの日も、そして雨の日も・・・


休み時間には、屋上のあがり、空を見ていました。

その日も、彼は屋上で空を見ていました。


その日は、あいにくの悪天候・・・

朝から雨が降り続いていました・・・


そんな日でも、彼は傘もささずに空を見上げていました。

さすがに心配になった私は、彼に声をかけました。

「風邪、ひくよ・・・」

「ありがとう」

それだけ言うと、彼はまた空を見上げました・・・。


「傘、貸そうか?」

「傘さしたら、空が見つけられない」

そういって、傘を受け取りませんでした・・・


周りの人たちは、彼を気にも止めていませんでした。

彼も、周りに溶け込もうとはしませんでした。


おせっかいな私は、何度も彼に声をかけました。

しかし、彼はオウム返しにしか、答えてくれませんでした。


でも、何度か話しているうちに、ある事に気が付きました。

彼は、「空が見られない」でもなく、「空が見れない」でもなく、

「空が見つけられない」と、言っていました。


それに気が付いた時、私は彼に尋ねました。

「空なら、いつでも見てるんじゃ・・・」

「・・・いいや、これは空ではない・・・」

私は、不思議でした。


「ねえ」

「何?」

彼のほうから、声をかけられたのは初めてでした。

少し、嬉しかったのを覚えています。


「空はどこにあるの?」

「どこって・・・」

私はとまどいました。


空はいつでも、頭上に広がっています。

これが空でないのなら、彼の言う空は何なのかが、わかりませんでした。


しかし、私もだんだんと気になりだしました。

「東京には空がない」

誰かが言っていました。


でも、ここは東京ではありません。

都会でもありません。

どちらかと言えば田舎でしょう。


なので、だんだんと彼に惹かれて行く自分がいました。

自分でも変わっていると思います。


私も彼とは別に、空を探してみる事にしました。


高校を卒業するまで、彼は空を探し続けていました。

卒業後は疎遠になりましたが、今も空を探し続けていると思います。


私も、空を探しています。


もし、彼が空を見つける事が出来ても、連絡は来ないでしょう。

私が、空を見つける事が出来ても、連絡はしません。


なぜなら、空は繋がっています。

もし、お互いが空を見つけれたら、その時はまた会えると思います。


この広い空のように・・・

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勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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