倒しても来週を待たずに別の敵!
ハヤトは、次は工場を選択した。
ここでも変電所に勝るとも劣らない数のメイドロイドがハヤトとサクラの前に立ち塞がった。
「変電所に似てるけど、それ以上か、む、似てる?そうだ、サクラちょっと」
サクラを呼ぶと、ハヤトの端末をサクラの手にかざす、すると、サクラの手が輝きだした。光は手だけでなく、頭、胴、脚と広がってゆく。
「このコマンドが有効かどうか試してみよう」
「お兄ちゃん、これなぁに?」
いつもは自分で光らせているが、自分ならぬ力で光っていると勝手が違うらしく、サクラが尋ねてくる。
「こいつでワクチンを直接メイドロイドにぶちこめるらしい。全身に展開したから、この状態で、やつらを叩いてみてくれ」
「了解!」
サクラがメイドロイドの群れに飛び込む。すると彼女の周りにいるメイドロイドが動きをとめた。
「効いてるみたいだな」
サクラは面白いのか、縦横無尽に走り回り、メイドロイドを振り回し、どんどんその稼働機体数を減らしていった。
ハヤトは、ワクチンで稼働を止めた手近な1体に駆け寄ると、さらに端末から別のコマンドを発行した。
「承知しました。ターゲット確認、戦闘を開始します」
メイドロイドの目が光り、サクラの背中を狙っていた別の1体に向かって殴りかかった。
「おー効いてる効いてる」
ハヤトが実行したのは、ワクチン後のメイドロイドに暴走メイドロイドとの戦闘を指示するコマンドだった。
当然であるが、サクラと同様にワクチンにより武装させている。
ハヤトは、何体かに同じ処理を施した。最初は圧倒されたものの、今や形勢はこちらにある。
「そろそろいいか、サクラ、ここは同士討ちするに任せてメインコンピュータへいこう」
「了解!」
そして、メインコンピュータでも同様に変電所のワクチンプログラムが有効だった。
こうして、3施設め、4施設目と彼はクリアしてゆき、当初時間経過による他施設の悪化が懸念されたものの、なんとか全施設をメイドロイドから解放することができたのだった。
ハヤトとサクラが全施設を解放する様子を見ていた白衣の女性、稲田は唸った。
「まさか、ここまでこられるなんて……彼は素人だったのでは?」
「いや、稲田、ここからだ」
ヒミコがこのように気になることを言っていたのは、しかし、ハヤト達には聞こえていなかった。
「これで全部か、やったなサクラ!」
「やったね!お兄ちゃん」
抱き合って喜ぶ2人。
しかし、全施設をクリアしたというのに、一向にテスト自体のクリア表示がされない。ハヤトは訝しく思った。
「何で、何も起きないんだ??」
それを言うか言わないかのうちに、片隅に現れた赤い人型、1つ、2つ、3つ……徐々に増え、気がつくと全体に最初のように赤い人型があふれていた。
「どういうことだ。ウイルスは全部駆除したんじゃなかったのか?」
今までやってきたことが無になったのを実感し、呆然とする彼の目の前で全ての赤い点は徐々に移動を開始した。
「どこへむかってるんだ……そうか」
全体の動きを俯瞰していると、一定の法則があることに気がついた。そう、赤い点、暴走メイドロイドは全てBASEに向かっているのだ。
「サクラっ!」
「了解!」
サクラとBASEに向かう。既にBASEの前には、これまでどの施設で見たよりも多くの暴走メイドロイドが押し寄せていた。
「サクラ、とにかくここを突破して中に入るぞ」
「了解!」
サクラが拳をギュッと握る。
彼女の装甲はこれまでの戦闘でところどころ痛んでいるのが見て取れる。
サクラ自身もいささか疲れているだろうに、その戦意は衰えていない。ハヤトはとても有り難く思った。
ハヤトが端末をかざした。サクラの体が光り輝く、それには、これまでに集めたワクチンが全て込められている。
「効くかどうかはわからないけど、無いよりはいいだろう」
「ありがとうお兄ちゃん。一千万人力だよ!」
「そこは……普通に百人力でいいんだぞ」
ハハハ、と力なく笑うと、真顔になったハヤトは覚悟を決めた。
「突撃だ!」
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