嘘で告白してみたけどめちゃくちゃ可愛い件について
朝田アーサー
第1話
唐突だけどさ、俺って嘘を吐くの、大好きな子なのさ。
でもさ、これってさ。
……あんまりじゃね?
「ねぇねぇ月くん! 私クッキー作ってみたんだぁー、えへへ」
俺に対してクッキーを作ったと見せてはにかんでくるのは、俺の、
肩の中ほどまで伸ばされた、校則どおりにしている黒い髪が雪の気分にあわせているように左右に揺れる。
俺の肩ほどの身長に、透き通った黒、というよりもアメジストに似た紫色の目に、幸せそうに綻ばす顔。
可愛い。可愛くはある。
だが、なぜだろう、なぜこうもうもウザったく思ってしまうのは。
「今日のお昼に一緒にクッキー食べようね! ね、いいでしょ?」
半ば強制にも似た願い。
俺は付き合ってから一週間も経たない、三日目から既に雪の作ってきてくれた弁当を求めている。
その弁当は雪の鞄の中で、俺は金の一銭も持っていない。
弁当を買うことが出来ないのだ。
昼飯を食べるのは、俺が雪と一緒にいなくてはいけないのだ。
「ああ、良いよ」
こう言うしかないのだ。
「ほんと!? やったぁ!」
嬉しそうに微笑む雪。
無条件に向けられる笑顔にしては眩しすぎるが、もう慣れてしまった。
いつでもどこでも付きまとってきて笑顔を向けてきて、話題を探るようにたわいの無い問いかけを投げてきたり、アクセサリなどで褒めて褒めてと可愛らしく言ってきたりなど。
俺は内心でため息を吐いた。
あの時、あんな嘘を吐かなければな、と。
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