第8話「未来」

 行き先を絶望が包む。

 果ては深く沈んだ沼か、取るに足らない小川の浅瀬か。

 仕切り1枚挟んだ塀の、奥は誰にも分からない。

 向こうの住人は言う。

「今のお前は俗物だ。こちらへは来れまい。例え、来たとしても溺れようぞ」

 全く的を得ている。

 自覚はあって、嫌悪が生まれ、それでも動かない己へと悲しみが向かう。

 何と愚かか。

 などと大仰に言ってはみるも、悪を囁く魔は居らず。この瞬間、天の使いが降りてくるはずも無い。

 はて、どうすれば。

 床に伏せって空を見る。間には天井、その木目が飛び込んで、やがてしわくちゃの脳へと意識が行った。

「何をしたいか......」

 他人には分からない自問自答。相談のしようもなく呟いた言霊は、唾を吐いたように降り戻る。

 やりたいことなら有るのだろう。未来はあって、想像もできる。決して夢物語では終わらせたくない思いが、そこに。

 だのに、数年。いや、1年先が暗雲だ。むしろすぐそこは戦場で、モヤがかかり始めているというのに。

 結局、何をしたいのかは分からなかった。

 早く見つけなくては死んでしまう。

 飢えを覚えた身体を起こし、今日もまた、堕落な一日が過ぎていく。

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