第2話 Welcome to Niflheim

「ん?この猫首輪がついてないじゃないか。」


 学校の帰り道、路地裏へと逃げていく猫を追いかけていくと首輪をつけてないことに気づいた。今日、繁華街で野良猫を見かけるのは珍しい。しかも日本でよく見る三毛猫ではなく、銀色の毛並みが目立つロシアンブルーと呼ばれる品種の猫だった。


「ロシア…か。そういえば今朝ニュースでテロ事件の話があったな…」




 俺が起きるのは基本的にいつも6時だ。起きてすぐに顔を洗い、インスタントの味噌汁とジャムを塗ったパンを食べている。因みに好きなジャムはマーマレードだ。マーマレードはオレンジでさっぱりするから朝には向いている。こうして朝食を済ませると制服に着替えるわけだが、ふとテレビを見ていると気になるニュースがやっていた。


「速報です。今朝日本時間で3時ごろモスクワとウラジオストクで同時多発テロがありました。犯人はいまだ逃亡中のようです。」


「はぁテロ何て一体何時ぶりか…」


 大きく世界で注目されたテロ事件というと本当に久しいもので、16年前俺が生まれた日に当時のフランス(現在はEUに所属している国が統合して欧州連合国に変わっている。)でイタリア(前に同じ)のマフィアによる大統領殺害事件だった。当時はちょうど国連にすべての国家が所属して平和が約束されているはずだった。その中で起きたテロだ。尚更、世界は混乱した。




 というのが今朝の出来事だった。この猫の品種にあるロシアと今朝のロシアで起きたテロについては何か関係性があるかどうかは分からないが、一つ分かることがあった。この猫、無茶苦茶可愛いな。


 とこんな具合に猫とじゃれているとふと後ろに人の気配を感じた。


「おう。お前こんなところで何してんだ?」


「あ…いや…猫がいたので…じゃれていました。」


 すると2メートルもあるのではないかと思うくらいの外人の男が話しかけてきた。しかし日本語うまいな。


「あーその猫な…悪いが家の猫ちゃんなんだ。返してもらってもいいか?」


「あっそうでしたか。勝手に触ってすいませんでした。」


「いやいいってことよ。なにせ丁度探していたところだしな。むしろ捕まえてくれてありがとな…ん?」


 そう男が話すと丁度ポケットから電話の着信音が鳴った。


「あーそういえば猫見つかったぞ。ん?あー例の日本人の少年か…いや丁度今猫を捕まえてくれた少年がいてな。え?名前?ああちょっと待ってくれ今聞いてみる。」


 男は電話を切ると再び俺の前に来て、


「てわけで名前教えてくれねーか?」


と聞いてきた。


 知らない他人に名前を教えるのはな…まあ猫の件もあったしな。そう思って俺は名前を教えた。


「俺の名前は津雲 煉だ。」


「そうか…おい津雲 煉だと。何?そいつが…いやもしそうならミドルネームがあるはずだな…おいお前ミドルネームとかないのか?」


「ミドルネームか…あいにくだが俺は両親とも生粋の日本人だからないと思うぞ。」


「んーどうすっかなー。あっそうだ。おいお前今夜は空いてるか?」


「まあ空いてるけど…」


「そうかならお前ちょっと家に来い。何すぐに返してやるからさ。」


「分かった。」


 そう俺は二つ返事で男の誘いに乗った。なんか変な意味に感じるな…


「じゃあ早速だがちょっと俺の隣に来い。」


「何をするんだ?」


「まあ見てれば分かるって。」


 すると男は俺が隣に来るとないやら呪文みたいなのを唱えた。


「我…最高神ゼウスに誓う…雲を超え時空をも超える翼を授けよ。」


 と男が唱えたと途端に俺の体は一瞬にして消えた。




成神 海鈴




「あれ?津雲君だ?なにしてるんだろう?」


 私がテニス部の練習が終わり家に帰っていると路地裏で何やらしゃがんで何かをしている津雲君の姿があった。私は気になって近くの自販機の陰に隠れ彼を見ていた。すると彼の近くに急に外国人の男の人が現れた。


「え?今急に現れたような…」


 まず先に言いたいのが私は昔からあまりオカルトの類の物はあまり信じていなかった。恋占いは少しだけ信じてたけど…だけど今のはどうしても科学では説明できないようなことだった。だってその人の足元光ったんだよ!


 するとその男の人は何やら津雲君と話していた。


「お前…名前…」


「ん…もう少し近づかないと聞こえないな…」


「そういえば今夜は空いてるか?」


 と男が言っているのが聞こえた。えっ津雲君そういう趣味だったの?いや少し上水君とそういう関係になることは妄想してたし周りの女子とも話したりはしてたけど…いざそうなると…いやそんなわけはない。だって津雲君はちゃんと女の子が好きだもん!


 なんて悶えていると急に光があふれてきた。


「あれ津雲君?なんかへんな魔方陣みたいなものの上に載ってるけど…もしかして…」


 それはさっき男の人が来た時と同じ光だった。急に現れたところを見ると何やら移動するものなのではないかと思い、私はあわてて光の中に飛び込んだ。


「津雲君ー!!そっちの道に行っちゃだめだよー!」




「さあついたぞ。ここが俺らの家。ニブルヘイムだ。」


 辺りは氷で覆われていた。どうやらニブルヘイムというのはさっきのゼウスというのもそうだがギリシャ神話に基づいているらしい。


「なあそういえばさっき女の子の声が聞こえなかったか?」


「いや気のせいだと思うけど…」


 こうして俺たちはニブルヘイムとやらに来た。女の子か…俺も彼女ほしいな…なんてな。




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