残照ザクレプション

sin

プロローグ

第0話 残照

「ぐ……う……」


どうして、こうなってしまったんだ……。裕也は爛れた自分の足と、迫り来る火球を見ながら、心の中で反芻する。


異世界に転生した訳では無い。確かに、そこは幼い頃から慣れ親しんだ町並み。その筈なのに、全てを飲み込むように辺り一面を埋め尽くす炎の海。


「ほれほれ、まだ三分しか経ってないぞ?さっさと立て」


目の前に立つ青年に促され、裕也はふらふらと立ち上がる。身体中を走る激痛に耐えながら。


「お前……なんでこんなことするんだよ……」


それは、その状況を作り出した張本人。目の前に佇む『炎』を操る青年に向けたもので。

しかしその真意は、その奥にいる幼馴染のための時間稼ぎにしか過ぎず。裕也は既にその状況が絶望的だということを、自分が助かる道が無いということを、はっきりと理解していた。



――平凡でありきたりな日々。それは、とある日を境に彼方へと過ぎ去っていく。

かけがえのなかった日々は彼らを置き去りに。正体不明の、謎の『能力』を残して――。


日常は、夕焼けの残照のように儚く消えていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る