青嵐に花は舞う
小林礼
序章 青華宮の貴人
序章 青華宮の貴人(一)
昔語りをいたしましょう。
わたくしの名は
なれない王宮づとめは、はじめはそれは辛いものでしたが、ひと月もたつ頃にはすっかりなじみ、また、叔母をはじめ他の女官のお姉さま方にも可愛がっていただきまして、いつしか王宮を我が家とまで思うようになりました。実際、わたくしには王宮のほかに帰る場所もございませんでしたから。
そのお方のお世話をおおせつかったのは、わたくしが十七の頃でございました。
乾にはいくつかの盟約国がございまして、はるか西の
わたくしがお仕えした貴人も、その貢物のひとつであったと申せましょう。
乾王宮における殿下のお住まいは、西のはずれ、
「もう故国で過ごした年月より長い」
はじめてお会いしたとき、殿下は卓に向かって書きものをなさっておられましたが、つと筆をとめて窓の外を眺められました。遠くを見つめるその眼差しは、故郷を
「ここにそなたの仕事はない」
殿下はわたくしを見て静かに告げられました。そこでわたくしはようやく気がついたのです。
殿下の、世にもまれな青い瞳に。
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