第66話〔初公開 うちのプリクラ!〕

高安女子高生物語・66

〔初公開 うちのプリクラ!〕    



 

 妊娠はせんとき……それが精一杯やった。


 カレができたいうくらいで、キャーキャー騒ぐ女子高生の世界で、美枝の話は飛躍しすぎてた。

 恋愛、体の関係……ここまでやったら、なんとか話のしようもある。


 せやけど、その相手が義理とは言え兄妹。それも手早く子どもつくって、既成事実を作ろとしてる。

 そんな美枝を、どう受け止めて、なに言うたらええのんか、ぜんぜん分からへん。


 うちの頭の中では「お兄ちゃんは、男の欲望を、お手軽な義理の妹ですませよとしてる」そんな平凡で薄汚い感想しか湧いてけえへん。

 そう思たら、美枝は、そっくりそのままの、うちの気持ちを言い当てよった。



「好きな相手がいてたらHしたなるのは普通や。で、単なる欲望からかどうか言うのは、いっしょに居てたらよう分かる。お兄ちゃんは、先のことまでしっかり考えてる。自分にあたしを養える甲斐性。始まったばっかりのあたしの青春。親に言うタイミング。せやけど、あたしは別のこと感じる。今しっかりしとかんと、お兄ちゃんとは一生兄妹のまんまや。それに、子どもが欲しいいうのは、あたし自身の切実な気持ちやねん。明日香やゆかりには分からへんやろな……あたしはお父さんとしか血のつながりがない。お兄ちゃんはお母さんとだけ。で、お父さんとお母さんは、もともと再婚同士の他人。あたしは確かな家族が欲しい。あたしに子どもができたら、子どもを通して、みんながほんまの家族になれる」

「美枝は、家族のために子どもが欲しいのん?」

「ちゃう。ほんまのほんまは、好きな人の子どもが欲しい。当たり前の女の気持ちや。その上で、うちの家族が仮面とちゃう、ほんまの顔で向き合えるようになったら、最高やん。ううん、生まれてくる子どものためにも、あたしらはほんまの家族になっとかならあかんねん、あかんねん!」


 もう言う言葉あらへん。ただ美枝の一途さが、哀れで、羨ましかった。


「ああ、胸の中吐き出したらすっきりした。おおきに明日香。明日のヤマはバッチリやさかいね!」



 便秘のCMに出られそうなくらいスッキリした顔で、美枝は行ってしもた。


 ほんで、今日のテストはバッチリやった。美枝のヤマハリは偉いもんや。これで自分の気持ちの確かさを間接的に示そとしてるのは……当たりやとおもう。

 明日はテストの中休みなんで、ゆかりと美枝と三人でミナミに出てはしゃいだ。カラオケで二時間。うちは可愛らしい『フォーチュンクッキー』四回ぐらいかけて、三人で歌って踊った。AKBのナンバーやら、モモくろなんか。やっぱりこのへんは、普通の高校生。

 ただ、ラストで、美枝が『前しか向かねえ』で閉めたんは意味深やった。


 それからプリクラを撮りに行った。


 うちは一年のときは、親しい友だち居てなかったよって、みんなでプリクラなんかは中学以来。

 プリクラもたった一年ちょっとで大進歩。一回の撮影で、アップ・ななめ・全身・コラージュの四種類を体験できる。一回400円やけど、三回も撮ってしもた。


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