第5話 〔明日香のファッション〕
高安女子高生物語・5
〔明日香のファッション〕
あたしはファッションには凝らん方
ただオンとオフの区別はつけてる。
学校行くときは完全な制服。家帰ったらラフっちゅうか、お気楽がコンセプトの気まま服。
まあ、ルーズにならん程度の体を締め付けへんもの。上は薄手のセーターで、外出するときはフリース。ちょっと遠いとこやったら、その上にダッフルコート。共にチャリでいける距離にあるユニクロ。
履き物は、ほん近所はサンダル。冬用と夏用があって、冬用は足の甲のとこにカバーが付いてるのん。夏はヒモとかベルトだけのん。じゃまくさい時はお父さんのサンダルをそのままひっかけたりする。
ちょっと遠いとこはスニーカー。学校行くときはローファーに決めてる。買うのんはユニクロの近所のABCマート。理由は簡単、近所にあるから。
明日から稽古が始まるんで、制服をチェック。
制服は気に入ってる。
男子は詰め襟に似てるけど、襟が低くて、角が丸い。そんで色が紺色。右の袖にイニシャルのGをかたどった刺繍でボタンは平べったい金ボタン。
女子は、一見男子と同じ色のセーラー服。前開きなんで着やすいし、リボンをせんかったり短こうしたりすると、前のジッパーが見えてしもてかっこ悪い。ほんで袖にGのイニシャル。
スカートは普通のプリーツみたいやけど、裾の下に黒で学校のイニシャルが入ってて、簡単には改造でけへん。さすが大阪府。長年制服の改造に悩まされてきたんで考えたある。
その制服を、明日に備えてチェック……OK……と思たら、あっちゃー、ローファーがいかれてた。
右足の底がつま先の方から剥がれかかってる。で、八尾の西武の中にあるABCマートまで買いに行く。チャリで二十分ほど。台詞が半分通せた。信号やら車に気い取られて止まってしまう。まだ覚え方がハンパな証拠。帰りに残り半分賭けてみよと思う。
せっかく八尾駅前まで来たんで、アリオの中にある映画館を覗いてみる。『ザ・ファブル』が観たかった。観てもかめへんねんけど、二月の一日には芸文祭の舞台が控えてる。観たら影響される予感がして我慢してる。
予告編だけ、プロジェクターで二回観た。
岡田准一がかっこええ、かっこ良すぎる。クールな殺し屋やねんけど、どこか三枚目。ヒラパーのCMやってからの岡田さんは大好き。イチビリのイケメン、完全にあたしのツボや!
あたしに与えられた台本は『ドリーム カム トゥルー』、ファンタジーや。岡田さん観たら、絶対影響される。そない思て、エレベーターに向かうと……目に入った、入ってしもた。
関根先輩と美保先輩が、ラブラブで入っていくのんが……。
心臓が口から出そうになる。
昨日に続いて二日連続の遭遇。
もう悪夢や!
昨日も、山本神社行って二人でお祈りして、おみくじひいて二人揃て大吉、マクドでかる~く「映画でも観にいかへんか?」「うん」「なんや、中味も聞かんと、うんかいな」「うん。学といっしょやったらなんの映画でもかめへん」「アホやなあ」
もう、その時の情景まで映画の予告編みたいに頭に浮かんで、パニック寸前。
帰りは、案の定台詞の稽古忘れてしもた。
「明日香、滝川とこで新年会やるけど、付いてくるか?」
帰るとお父さんに勧められた。滝川さんは、お父さんの数少ないお友だち。あたしらガキンチョでもオモロイオッサン。二つ返事でOK。
宴会では、フランス人とのハーフのニイチャンと、二十歳過ぎのベッピンさん。オッサン、オバハンは記憶には残ってない。
まあ、この人らのことはおいおいと。
明日から、稽古が始まりますのですのよ!
痛!
舌噛んでしもた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます